ポリファーマシーとは?高齢の親の薬が多いときの目安と相談先

コラム

ポリファーマシーとは、飲んでいる薬の種類が多いことに関連して、副作用などのリスクが高まったり、飲み間違いや飲み忘れが起きたりしている状態のことです。単に薬の数が多いことだけを指す言葉ではありません。

「親の薬が年々増えて、何を何のために飲んでいるのか分からない」「最近ふらつくようになったのは、薬のせいでは?」——離れて暮らす家族や介護をしている家族のなかには、こうした心配を抱えている方もいるのではないでしょうか。

高齢になると複数の病気を抱えやすく、受診する医療機関や診療科が増えるにつれて、薬も積み重なりやすくなります。この記事では、厚生労働省の指針や日本老年医学会のガイドラインをもとに、ポリファーマシーの目安、注意したいサイン、家族ができる相談の準備をまとめました。


ポリファーマシーとは?何種類からが目安?

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」では、ポリファーマシーを次のように説明しています。

  • 単に服用する薬の数が多いことではない
  • 薬の数が多いことに関連して、副作用などのリスクの増加、飲み間違い、決められたとおりに飲めなくなるなどの問題につながる状態

「何種類から」という決まりはある?

同じ指針では、何種類からポリファーマシーとするかに厳密な定義はないとされています。そのうえで、次のような考え方が示されています。

  • 指針が紹介する総合病院の老年病科に入院した患者2,412人を対象とした研究では、薬剤数が多いほど薬物有害事象(薬による有害な症状など)が増え、6種類以上で特に増加したと報告されている
  • 一方で、治療に6種類以上の薬が必要な場合もあれば、3種類で問題が起きる場合もある
  • 大切なのは種類の数ではなく中身であり、一律に数だけを見て減らすのではなく、処方内容を見直すことが求められる

「6種類以上なら危ない」「5種類以下なら安心」と数だけで判断せず、気になるときは医師・薬剤師に相談することが大切です。


高齢者に処方される薬の種類数は?

厚生労働省「令和7(2025)年社会医療診療行為別統計」(2025年8月審査分)で、院外処方(薬局調剤)の調剤報酬明細書(レセプト)に記録された薬剤種類数をみると、75歳以上の明細書の割合は次のとおりです。

薬剤種類数75歳以上の明細書の割合
1〜2種類35.8%
3〜4種類25.1%
5〜6種類16.0%
7種類以上23.1%

75歳以上では、集計対象の調剤報酬明細書の23.1%が7種類以上です。

この統計の「1件」は、毎月提出される明細書1枚を指し、処方箋1枚や受け取り1回を指すものではありません。薬剤が記録された明細書を対象に、薬価基準の品名単位で種類数を数えています。患者一人ひとりが同時に飲んでいる薬の総数や、ポリファーマシーの人の割合を直接示す数字ではありません。

出典:同統計「薬剤の使用状況」図14・注2、「用語の定義」。

厚生労働省は2024年7月、病院と地域それぞれでのポリファーマシー対策の始め方と進め方をまとめ、都道府県などを通じて医療機関等へ周知するよう通知しています。


薬が多いと何が起こりやすくなる?

厚生労働省の指針では、高齢者に薬の有害な症状が起こりやすい大きな要因として、加齢による体の変化と多剤服用の2つが挙げられています。薬が多いと、次のような問題につながることがあります。

副作用などが起こりやすくなる

加齢に伴い、薬が体内に残りやすくなったり、効き方が変わったりします。そこに複数の薬が重なると、有害な症状が起こりやすくなります。

飲み間違い・飲み忘れが増える

薬の種類や飲む回数が増えて処方が複雑になると、正しく飲み続けることが難しくなります。指針では、認知機能の低下は本人との会話だけでは気づきにくいため、家族や薬剤師などから生活の様子や残っている薬を確認することが望ましいとされています。

薬の副作用を別の病気と捉えて薬が増える「処方カスケード」

薬の副作用による症状を別の病気の症状と捉えて、新たな薬が追加されてしまうことがあります。指針ではこれを「処方カスケード」と呼び、悪循環に陥る可能性があるとしています。

複数の医療機関で薬が重なる

いくつもの医療機関や診療科にかかっていると、それぞれは2〜3種類の処方でも、合計すると多くの薬になることがあります。処方の全体が把握されず、同じ働きの薬が重なって処方されることもあります。


家族が気づけるサインは?薬が関係することもある症状

厚生労働省の指針には、薬が原因で起こりうる高齢者の症状(薬剤起因性老年症候群)の一覧があります。主な症状と、原因となりうる薬の種類は次のとおりです。

気づきやすい症状原因となりうる主な薬の種類(例)
ふらつき・転倒降圧薬、睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬 など
物忘れ(記憶障害)睡眠薬・抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)、抗うつ薬(三環系)、抗ヒスタミン薬 など
せん妄(急に混乱する・つじつまが合わない)睡眠薬、抗不安薬、抗ヒスタミン薬、パーキンソン病治療薬 など
気分の落ち込み一部の降圧薬、抗ヒスタミン薬、副腎皮質ステロイド など
食欲低下非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、アスピリン、緩下剤 など
便秘睡眠薬・抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)、抗うつ薬(三環系)、過活動膀胱治療薬(ムスカリン受容体拮抗薬)など
排尿障害・尿失禁抗うつ薬(三環系)、過活動膀胱治療薬(ムスカリン受容体拮抗薬)、抗ヒスタミン薬、利尿薬 など

ムスカリン受容体拮抗薬は、抗コリン作用をもつ薬の一群です。この表は、薬が原因となりうる症状の例であり、同じ分類のすべての薬に一律に当てはまるものではありません。表にある薬を使うと必ず症状が出るわけではなく、症状だけで原因の薬を判断することもできません。

「最近よく転ぶ」「急に物忘れが増えた」「食欲が落ちた」など、いつもと違う様子に気づいたら、いつ頃から始まったか、その前に薬が変わっていないかをメモして、医師・薬剤師に伝えましょう。ただし、症状の原因は薬とは限りません。自己判断で薬をやめずに相談してください。

特に、急にふらついて立っていられない、呼びかけても返事がない、意識がもうろうとしている場合は、薬の相談や次の受診日を待たずに119番へ連絡してください。消防庁も、これらを高齢者でためらわず救急車を呼んでほしい症状として挙げています。


高齢者が特に注意したい薬は?ガイドライン2025のポイント

日本老年医学会は、2025年7月に「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2025」を発行しました。2015年版から10年ぶりの改訂です。

「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」はどう変わった?

ガイドラインには、高齢者に特に慎重な使い方が求められる薬をまとめた「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」があります。厚生労働省の検討会で示された資料によると、2025年版の主な変更点は次のとおりです。

  • 29系統から28系統に
  • 削除:抗血小板薬、H2受容体拮抗薬(胃酸を抑える薬の一種)
  • 追加:GLP-1(GIP/GLP-1)受容体作動薬

ここで紹介している2025年版の変更点は、公開された検討会資料で確認した範囲です。個別の薬の推奨内容や使用条件の詳細は、2025年版の書籍で確認する必要があります。

リストに載っている薬でも、病状によっては必要な場合があります。掲載の有無だけで安全性や中止の必要性を判断せず、処方した医師や薬剤師に相談しましょう。

「日本版抗コリン薬リスクスケール」が加わった

2025年版では、日本老年薬学会が2024年に公開した「日本版抗コリン薬リスクスケール」が新たに加わりました。抗コリン作用(神経伝達物質アセチルコリンの働きを妨げる作用)をもつ158の薬を1〜3点で点数化したもので、市販薬(一般用医薬品)の成分も含まれています。服用中の薬の点数を合計して、抗コリン作用による負担を評価するための指標で、医療者による薬の見直しに用いられます。合計点だけで薬の中止や変更を判断せず、医師・薬剤師に確認してください。

薬を「減らす」だけではない

ガイドラインには、高齢者に使うことを考慮すべき薬をまとめた「開始を考慮するべき薬物のリスト」もあり、2025年版では8系統から9系統になりました。厚生労働省の指針も、高齢者の薬物療法の目的に「過少医療の回避」を掲げています。薬は減らせばよいというわけではなく、必要な薬が使われていないことにも注意が必要です。

また、2025年版では、薬の見直しにあたって高齢者総合機能評価(CGA)や多職種の協働が必要なことが追記されました。CGAは、病気だけでなく、認知機能、日常生活の動作、栄養状態、生活環境、服薬状況などを含めて総合的に評価する方法です。


薬の見直しを相談したいとき、家族はどうすればいい?

厚生労働省の指針は医師・歯科医師・薬剤師向けにつくられたもので、患者や家族は利用対象としておらず、気になる点があれば医療関係者に相談してほしいとされています。家族ができるのは、自己判断で薬を調整することではなく、相談の準備をすることです。

自己判断で減らしたり、やめたりしない

薬の減量や中止は、医師が必要性や方法を判断し、その後の病状の変化や有害な症状にも注意して進めます。「薬が多いから」と本人や家族の判断で減らしたり、やめたりしないでください。

相談前に準備しておきたいこと

  • お薬手帳を1冊にまとめる:医療機関ごとに分かれていると、処方の全体が見えにくくなります。指針でも、お薬手帳などを活用した処方・調剤の一元管理が挙げられています
  • 市販薬・サプリメントも書き出す:指針では、処方薬だけでなく市販薬やサプリメントも含めて確認する必要があるとされています
  • 残っている薬を持って行く:厚生労働省は、薬の種類が多くて飲めない、飲みづらいといった理由で薬が残ってしまう高齢の患者が少なくないとしています。残っている薬は、飲み方を見直すきっかけになります
  • 気になる症状をメモする:いつから、どんな様子か、その前に薬が変わっていないかを書いておくと伝わりやすくなります
  • かかっている医療機関・診療科を一覧にする:どこで何の薬を受け取っているかが分かると、重複の確認に役立ちます

お薬手帳の使い方は、「お薬手帳のメリット|電子版・マイナ連携も薬剤師が解説」で詳しく紹介しています。


薬局ではどんな相談ができる?

厚生労働省は、薬を一元的・継続的に把握し、飲み合わせや副作用などの相談に応じる「かかりつけ薬剤師・薬局」を持つことをすすめています。高齢の患者では、薬の種類が多くて飲みきれない「残薬」や、処方薬と一緒に市販薬やサプリメントを使っている例があることも示されています。

薬局に相談するときのポイントは次のとおりです。

  • 薬局をできるだけ1か所にまとめる:処方の全体を把握してもらいやすくなります
  • 市販薬・サプリメントも同じ薬局で相談する:処方薬との飲み合わせを確認してもらえます
  • 飲みにくさや飲み忘れも伝える:飲む回数や飲み方の工夫について、医師への提案を含めて相談できます

指針でも、薬局による調剤と薬の情報の一元管理が、ポリファーマシーの解消に向けて期待されています。かかりつけ薬局については、「かかりつけ薬局のメリットと2026年からの変化を解説」をご覧ください。

飲むタイミングの基本は「薬の飲むタイミング完全ガイド|食前・食後・食間の違いを解説」でまとめています。


よくある質問(FAQ)

Q. 薬は何種類から「多すぎる」のですか?

A. 厚生労働省の指針では、何種類からポリファーマシーとするかに厳密な定義はないとされています。老年病科の入院患者を対象に、6種類以上で薬物有害事象が特に増えたという研究報告がある一方、3種類で問題が起きる場合もあり、種類の数より中身が大切とされています。

Q. 親の薬を家族の判断で減らしたり、やめたりしてもいいですか?

A. 自己判断で減らしたり、やめたりしないでください。薬の減量・中止の方法や時期は、医師が病状などを踏まえて判断します。気になる薬があれば、処方した医師や薬剤師に相談しましょう。

Q. 市販薬やサプリメントも伝えたほうがいいですか?

A. はい。指針では、処方薬だけでなく市販薬やサプリメントも含めて確認する必要があるとされています。日本版抗コリン薬リスクスケールにも市販薬の成分が含まれています。お薬手帳に書き込むか、現物を持って相談しましょう。

Q. お薬手帳は病院ごとに分けてもいいですか?

A. 1冊にまとめるのがおすすめです。医療機関ごとに分かれていると、処方の全体が把握しにくくなります。指針でも、お薬手帳などを活用した処方・調剤の一元管理が挙げられています。

Q. 薬を減らすと、病気が悪くならないか心配です。

A. 薬を見直す際には、必要な治療が不足しないことにも注意が必要です。指針でも、数合わせで薬を減らすべきではないとされています。医師が病状などを踏まえて減量・中止の必要性を判断し、変更後の状態も確認します。

Q. 最近ふらつくのは薬のせいでしょうか?

A. ふらつきや転倒は、降圧薬や睡眠薬など、薬が原因で起こることがある症状の一つです。ただし原因は薬とは限りません。いつから始まったか、その前に薬が変わっていないかをメモして、医師・薬剤師に相談してください。なお、急にふらついて立っていられない場合は、119番へ連絡してください。

Q. どこに相談すればいいですか?

A. まずは、いつも薬を受け取っている薬局の薬剤師や、かかりつけ医に相談しましょう。薬局を1か所にまとめておくと、複数の医療機関の薬をまとめて確認してもらいやすくなります。


まとめ

  • ポリファーマシーは、薬が多いことに関連して副作用や飲み間違いなどの問題が起きている状態。何種類からという厳密な定義はなく、中身が大切
  • 75歳以上の調剤報酬明細書の23.1%で薬剤が7種類以上。患者ごとの服用薬の総数や、ポリファーマシーの割合を示す数字ではない(2025年統計)
  • ふらつき、物忘れ、食欲低下、便秘などは薬が原因のこともある。いつもと違う様子に気づいたら医師・薬剤師に伝える
  • 薬を家族の判断で減らしたり、やめたりしない。お薬手帳を1冊にまとめ、市販薬・サプリメントも含めて相談する
  • 薬局を1か所にまとめると、処方の全体を確認してもらいやすくなる

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療の代替となるものではありません。気になる症状がある場合や判断に迷う場合は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。


参考文献・出典


執筆・監修

くすりやきゅー(薬剤師/病院・保険薬局で10年以上勤務)
詳しいプロフィールはこちら

タイトルとURLをコピーしました