2026年5月施行|指定濫用防止医薬品とは?改正のポイントと購入時の注意点をわかりやすく解説

コラム

はじめに

2026年5月1日、改正薬機法(医薬品医療機器等法)の省令が施行され、市販薬のオーバードーズ(OD)対策が大きく強化されます。

今回の改正の目玉は「指定濫用防止医薬品」という新しい法的区分の創設です。これまで「濫用等のおそれのある医薬品」として運用されてきた規制が法律上の義務として明確化され、対象成分も6成分から8成分に拡大されました。

ドラッグストアやコンビニで身近に手に取れる市販薬が、なぜ今規制されるのか。この記事では、改正の背景・ポイント・消費者への影響をわかりやすく解説します。


改正の背景:なぜ今、規制が強化されたのか

10代・20代を中心に市販薬のオーバードーズ(OD)が急増しており、社会問題となっています(詳しくは「市販薬のオーバードーズ(OD)とは?10代・20代に広がる薬物乱用の危険性と対処法」の記事もご参照ください)。

これまでも「濫用等のおそれのある医薬品」として一定のルールはありましたが、その多くは販売店側の努力義務にとどまっていました。また、対象成分の選定が実態と乖離しているという指摘も専門家から上がっていました。

厚生労働省の安全対策調査会資料によれば、依存症専門医療機関の患者調査で、市販薬乱用の原因物質としてデキストロメトルファンが34.7%、ジフェンヒドラミンが17.7%を占めていたにもかかわらず、これらは規制対象外でした(※1)。こうした課題を受け、今回の改正で制度が抜本的に見直されました。


改正の3大ポイント

ポイント① 名称変更と対象成分の拡大(6成分→8成分)

従来の「濫用等のおそれのある医薬品」という名称が「指定濫用防止医薬品」に変わり、対象成分が以下の8成分に拡大されました。

成分名主な用途今回の扱い
エフェドリン気管支拡張薬・鼻炎薬従来から規制
コデイン咳止め薬従来から規制
ジヒドロコデイン咳止め薬従来から規制
ブロモバレリル尿素睡眠補助薬・解熱鎮痛薬従来から規制
プソイドエフェドリン鼻炎薬従来から規制
メチルエフェドリン総合感冒薬・気管支拡張薬従来から規制
デキストロメトルファン咳止め薬今回新たに追加
ジフェンヒドラミン睡眠補助薬・鼻炎薬・抗アレルギー薬今回新たに追加

これらの成分を含む市販薬が「指定濫用防止医薬品」の対象となります。※外用剤は除く


ポイント② 18歳未満への販売制限の強化

今回の改正で最も大きな変化の一つが、18歳未満への販売制限です。

18歳未満の方が購入できる数量は「少容量」までに制限されます。複数個や大容量の製品を購入することはできません。

また、18歳未満への販売には以下の対応が義務付けられます。

  • 薬剤師または登録販売者が対面またはオンライン(ビデオ通話など)で販売すること
  • 年齢と氏名の確認
  • 乱用リスクについての説明と、購入者が理解しているかの確認

ポイント③ 陳列・確認義務の厳格化

陳列場所などの販売ルールが、法的義務(違反には罰則あり)として明確化されました。

陳列規制(第2類医薬品、第3類医薬品 以下のいずれかの方法)

  • 鍵をかけた陳列
  • 購入者が直接手の届かない場所
  • 情報提供設備から7メートル以内の範囲に陳列する場合、当該設備にその薬局又は店舗 において薬事に関する実務に従事する薬剤師又は登録販売者を継続的に配置する

購入時の確認義務

販売者は購入者に対し、次の事項を確認することが義務付けられます。

  • 購入者の年齢
  • 他の薬剤又は医薬品の使用状況
  • 18歳未満の場合は氏名
  • 購入者の状況の確認及び濫用等にかかる情報提供の実施
  • 同じ指定濫用防止医薬品を他の店舗で購入していないか
  • 複数購入の場合、その理由

新たに追加された2成分について

デキストロメトルファン

咳止め薬に広く含まれる成分です。通常用量では安全に使用できますが、大量摂取すると中枢神経に作用し、幻覚・解離症状(現実感の喪失)を引き起こすことがあります。この「ふわふわした感覚」を目的とした乱用が10代を中心に広がっており、乱用実態調査での検出率が高かったことから今回の指定に至りました。

ジフェンヒドラミン

花粉症・アレルギー性鼻炎の薬や睡眠補助薬に含まれる成分です。強い眠気・鎮静効果を引き起こすことから乱用されるケースがあり、大量摂取では意識障害・呼吸抑制・不整脈などの危険な副作用が生じます。乱用実態調査でも上位で検出されていたことから、今回指定されました。


消費者(購入者)が知っておくべき注意点

今回の改正により、ドラッグストアや薬局での購入手続きに変化が生じます。消費者として以下の点を理解しておきましょう。

身分証明書の提示を求められることがある

年齢確認のため、マイナンバーカード・運転免許証・学生証などの提示を求められる場合があります。特に若く見える方は準備しておくとスムーズです。

1度に複数個の購入が難しくなる場合がある

正当な理由(複数人分の購入など)がある場合を除き、適正数量を超える購入は断られることがあります。「予備に多めに買っておこう」という購入は対応が難しくなります。

対面または対面に準ずる方法での販売が必要となる場合がある

ネット通販での購入ルールも見直されます。対面販売またはビデオ通話による確認が必要となる場合があるため、購入方法が変わる可能性があります。

「なぜそんなに確認するの?」と思ったら

販売者側の確認は法律上の義務であり、乱用を防ぐための重要な取り組みです。不快に思わず、ご協力をお願いします。


市販薬を正しく使うために

指定濫用防止医薬品に指定されたからといって、これらの薬が「危険な薬」になるわけではありません。用法・用量を守って正しく使えば、安全で有効な薬です。

今回の改正の目的は「乱用・依存を防ぐこと」であり、正当な目的での購入・使用を制限するものではありません。

風邪や痛み、アレルギーなどで市販薬を必要としている方が安心して使い続けられるよう、販売制度の適正化が図られています。


まとめ

2026年5月1日施行の改正薬機法による主な変更点をまとめます。

  • 名称変更:「濫用等のおそれのある医薬品」→「指定濫用防止医薬品」
  • 対象拡大:6成分→8成分(デキストロメトルファン・ジフェンヒドラミンを新たに追加
  • 18歳未満の規制:購入できる数量は小容量まで・氏名確認が必要
  • 陳列規制:鍵付きケース・仕切りなどで購入者が手に取れない陳列が義務化

市販薬のオーバードーズは命に関わる深刻な問題です。今回の改正を機に、薬との正しい付き合い方を改めて考えてみてください。


関連記事

市販薬のオーバードーズ(OD)がなぜ危険なのか、依存のメカニズムや相談窓口について詳しくはこちらをご覧ください。

市販薬のオーバードーズ(OD)とは?10代・20代に広がる薬物乱用の危険性と対処法


※ 本記事は一般的な啓発・情報提供を目的としたものであり、医療上の診断・治療を目的とするものではありません。症状や疑問点については、医師・薬剤師など医療専門家にご相談ください。

※ 掲載内容は2026年4月時点の情報に基づいています。最新の規制内容については厚生労働省の公式情報をご確認ください。


参考文献・出典

コメント

タイトルとURLをコピーしました