2026年5月施行|指定濫用防止医薬品とは?改正のポイントと購入時の注意点をわかりやすく解説

コラム

指定濫用防止医薬品とは、濫用すると中枢神経系の興奮・抑制や幻覚を生じるおそれがあり、その防止を図る必要がある医薬品として、厚生労働大臣が指定するものです。2026年5月1日から、せき止めやかぜ薬などに含まれる8つの成分を含む市販薬(外用剤などを除く)が指定され、購入時の確認や販売方法のルールが変わりました。

(出典:医薬品医療機器等法 第36条の11、厚生労働省 医薬発0213第1号)

この改正は、2025年5月に公布された改正薬機法(令和7年法律第37号)の一部として施行されたものです。これまで「濫用等のおそれのある医薬品」として省令で定められていたルールが、法律に位置づけられました。

ドラッグストアや薬局で身近に手に取れる市販薬が、なぜ規制されるのか。この記事では、改正の背景・ポイント・購入するときに変わる点を解説します。

なぜ規制が強化されたのですか?

厚生労働省の通知では、若年者を中心に、かぜ薬などの一般用医薬品の濫用が拡大しているとして、多量購入・頻回購入の防止を徹底する必要があるとしています(詳しくは「市販薬のオーバードーズ(OD)とは?10代・20代に広がる薬物乱用の危険性と対処法」の記事もご参照ください)。

これまでも省令などで、若年者の氏名・年齢の確認や、原則1包装のみの販売、それ以上を購入する場合の理由の確認が求められていました。しかし、遵守状況を含めて不十分であり、実効性を高める必要があるとされました(※1)。

また、研究報告では、令和6年4〜5月に依存症専門医療機関で治療を受け、主たる精神科的症状に最も関連する薬物が一般用医薬品と判断された患者について、29施設から294症例が報告されました。主として濫用されていた市販薬に含まれる成分は、ジヒドロコデイン(55.1%)が最も多く、デキストロメトルファン(34.7%)、ジフェンヒドラミン(17.7%)と続きました。このうちデキストロメトルファンとジフェンヒドラミンは、当時の指定の対象外でした(※1)。

国の補助金による研究班(国立精神・神経医療研究センター)は、この2成分について、直ちに指定すべきとの見解案を示しています(※1)。こうした経緯を受けて、制度が見直されました。

改正のポイントは何ですか?

ポイント① 法律上の位置づけと対象成分の拡大(6成分→8成分)

これまでの「濫用等のおそれのある医薬品」に代わり、法律に「指定濫用防止医薬品」が位置づけられました。対象成分は、従来の6成分に2成分を加えた8成分です。

成分名主に配合されている内服の市販薬(※2)今回の扱い
エフェドリン当該資料では該当品目なし(※3)従来から指定
コデイン鎮咳去痰薬(せき止め)従来から指定
ジヒドロコデインかぜ薬・鎮咳去痰薬従来から指定
ブロモバレリル尿素解熱鎮痛薬従来から指定
プソイドエフェドリン鼻炎用内服薬・かぜ薬従来から指定
メチルエフェドリンかぜ薬・鎮咳去痰薬・鼻炎用内服薬従来から指定
デキストロメトルファンかぜ薬・鎮咳去痰薬今回新たに追加
ジフェンヒドラミン催眠鎮静薬・かぜ薬今回新たに追加

※2 令和7年10月時点のPMDAの登録情報をもとに厚生労働省が集計した品目数(※1)から、品目数の多い薬効を示しています。

※3 エフェドリンについては、令和7年10月時点のPMDAの登録情報をもとにした厚生労働省の集計では、外用痔疾用薬のみが掲載されています。外用剤は指定濫用防止医薬品の対象外です。

これらの成分(その水和物・塩類を含む)を有効成分として含む製剤が対象です。ただし、次のものは対象外です。

  • 外用剤(トローチ剤などの口の中に使う薬、吸入剤、点眼剤、点鼻剤、坐剤、軟膏剤、貼付剤など)
  • 生薬を主な有効成分とする製剤

(出典:厚生労働省 医薬発0213第1号)

ポイント② 18歳未満は「小容量1個」まで・大容量や複数個は理由の確認が必要

18歳未満の方は、小容量の製品を1個までしか購入できません。大容量の製品や、複数個の購入はできません。

ここでいう「小容量」とは、1包装で、用法・用量からみて5日分以内の製品です。成分と効能によっては7日分以内となります(例:かぜ薬としての効能がある製剤など)。

この日数は、販売時の数量区分を判断するための基準です。実際の使用にあたっては、添付文書の用法・用量や使用上の注意に従ってください。

(出典:厚生労働省 医薬発0213第2号)

18歳未満の方が購入する場合は、薬剤師または登録販売者から「対面等」で情報提供を受ける必要があります。

18歳以上の方でも、大容量の製品や複数個を購入する場合は、購入の理由を確認されたうえで、「対面等」で情報提供を受ける必要があります。

ここでいう「複数個」には、同じ指定成分を含む別々の製品を購入する場合も含まれます。一方、共通する指定成分がない製品を各1個購入する場合は、この数量基準上の「複数個」には当たりません。ただし、組み合わせなどに応じて、購入理由の確認や、重複使用・相互作用についての説明が行われることがあります。

「対面等」とは、店頭での対面のほか、ビデオ通話のように映像と音声でリアルタイムにやりとりする方法です。電話や書面のみ、チャットなどによる方法は含まれません。

(出典:医薬品医療機器等法 第36条の11第3項、同法施行規則 第159条の18の6、厚生労働省 医薬発1226第16号)

ポイント③ 陳列のルール

第2類・第3類医薬品にあたる指定濫用防止医薬品は、次のいずれかの方法で陳列することが義務づけられました。

  • 陳列棚から1.2メートル以内に購入者が入れないようにした区画の内側に陳列する。または、鍵をかけた陳列設備など、購入者が直接手を触れられない陳列設備に陳列する
  • 情報提供を行う設備から7メートル以内に陳列し、その設備に薬剤師または登録販売者を継続的に配置する

要指導医薬品や第1類医薬品にあたるものは、それぞれの区分の陳列ルールに従います。

店頭では空き箱や商品カードだけが棚に並び、実物は購入者の手の届かない場所に置かれている場合もあります。

(出典:医薬品医療機器等法施行規則 第218条の5、薬局等構造設備規則 第1条・第2条、厚生労働省 医薬発1226第16号、指定濫用防止医薬品の販売等に係る質疑応答集)

ポイント④ 販売時の確認と情報提供

販売する薬剤師・登録販売者は、次の事項を確認することとされています。

  • 年齢
  • ほかの薬の使用状況
  • 18歳未満の場合は氏名
  • その製品や、ほかの指定濫用防止医薬品の購入状況
  • 大容量の製品や複数個を購入する場合は、その理由
  • 適正な使用であることを確認するために必要な事項

あわせて、濫用した場合に健康被害が起こるおそれがあることを、書面(店頭の掲示物や製品の包装の表示などを含む)を用いて説明し、内容を理解したか、質問がないかを確認します。

また、薬局やドラッグストアは、頻回購入・多量購入への対応を含めた「指定濫用防止医薬品販売等手順書」を整備することとされています。

(出典:医薬品医療機器等法 第36条の11、厚生労働省 医薬発1226第16号)

新たに追加された2成分はどんな成分ですか?

デキストロメトルファン

かぜ薬やせき止め薬に含まれる成分です。延髄にある咳中枢に直接作用し、咳反射を抑えます。

長期間・大量に使用した場合には、依存が形成されることや離脱症状が起こることが報告されています。国内外で、過剰摂取によると思われる健康被害(死亡を含む)が報告されています(※1)。

ジフェンヒドラミン

内服薬では、催眠鎮静薬やかぜ薬などに含まれる成分です。ヒスタミンH1受容体の働きを抑え、中枢神経の活動を抑制して眠気を起こすほか、鼻づまりやかゆみなどのアレルギー症状を抑えます。

連用中に急に減量・中止した場合に、頻脈、発汗などの離脱症状が報告されています。国内外で、過剰摂取によると思われる健康被害(死亡を含む)が報告されています(※1)。

なお、ジフェンヒドラミンは塗り薬などの外用剤にも多く含まれていますが、外用剤は対象外です。

購入するときに何が変わりますか?

購入時に年齢を確認される

購入時には年齢の確認があります。外見などから18歳以上であることが明らかでない場合には、身分証の提示や登録済みの会員情報などによる確認が行われることがあります。

インターネットでの購入では、身分証のアップロードやマイナンバーカードによる年齢認証などの方法が想定されています。

(出典:厚生労働省 医薬発1226第16号、指定濫用防止医薬品の販売等に係る質疑応答集)

複数個・大容量の購入では理由を聞かれる

18歳以上の方が大容量の製品や複数個を購入する場合は、理由を聞かれます。厚生労働省の質疑応答集では、想定される理由として、家庭の常備薬として購入する場合や、同じ症状の家族が使う場合、長期の海外赴任・海外旅行に持っていく場合などが挙げられています。

ただし、理由を伝えれば必ず購入できるわけではありません。薬剤師・登録販売者が、理由に照らして適切な数量かを判断します。

ほかの店での購入状況やほかの薬の使用状況を聞かれる

同じ薬やほかの指定濫用防止医薬品をほかの店で購入していないか、ほかにどんな薬を使っているかなどを確認されます。

インターネットでの購入方法

18歳以上の方が小容量の製品を1個購入する場合は、通常のインターネット販売の流れで購入できる場合があります。大容量の製品や複数個の購入、18歳未満の方の購入では、ビデオ通話などによる情報提供が必要です。

実際にどの方法で購入できるかは、販売元の取り扱いによります。

販売を断られる場合もある

情報提供ができない場合や、適正な使用を確保できないと認められる場合には、販売できないと法律で定められています。

販売時の確認は法律にもとづくもので、濫用を防ぐための取り組みです。

(出典:医薬品医療機器等法 第36条の11、厚生労働省 医薬発1226第16号・同 質疑応答集)

指定された薬は「危険な薬」なのですか?

指定濫用防止医薬品は、濫用した場合に健康被害が起こるおそれがあることから、販売方法のルールが定められた医薬品です。

使うときは、添付文書を読み、用法・用量を守ってください。症状が続く場合や、どの薬を選べばよいか迷う場合は、医師・薬剤師・登録販売者にご相談ください。

厚生労働省は、薬剤師や登録販売者が、販売時の声かけや情報提供を通じて、支援が必要な人を相談窓口などにつなぐ「ゲートキーパー」の役割を果たすことも期待されているとしています。薬の使い方で困っていることがあれば、店頭で相談することもできます。

よくある質問

Q. 指定濫用防止医薬品の制度はいつから始まりましたか?

A. 2026年5月1日から始まりました。

Q. 買おうとしている薬が対象かどうかは、どうすればわかりますか?

A. 外箱や添付文書の成分表示で、対象の8成分が含まれているかを確認できます。成分名に「塩酸塩」などが付いている場合も対象です。ただし、外用剤や生薬を主な有効成分とする製剤は対象外です。判断に迷う場合は、薬剤師・登録販売者にお尋ねください。

Q. 18歳未満でも購入できますか?

A. 小容量の製品1個について、対面またはビデオ通話などで必要な確認・説明を受け、適正な使用を確保できると判断された場合には、購入できます。大容量の製品や、同じ指定成分を含む製品の複数個購入はできません。

Q. 家族の分もまとめて買えますか?

A. 18歳以上の方であれば、理由を伝えたうえで、対面またはビデオ通話などで説明を受けて購入できる場合があります。数量が適切かどうかは、薬剤師・登録販売者が判断します。

Q. 同じ成分の別の薬を1つずつ買うのも「複数個」になりますか?

A. はい、同じ指定成分を含む別々の製品を1つずつ購入する場合も、複数個の購入にあたります。共通する指定成分がない製品を各1個購入する場合は、数量基準上の「複数個」には当たりません。

Q. ネット通販では購入できなくなったのですか?

A. 18歳以上の方が小容量の製品を1個購入する場合は、通常のインターネット販売で購入できる場合があります。大容量の製品や複数個、18歳未満の方の購入では、ビデオ通話などによる説明が必要です。実際の購入方法は販売元の取り扱いによります。

まとめ

  • 2026年5月1日から、濫用のおそれがある8成分を含む市販薬が「指定濫用防止医薬品」として法律に位置づけられた
  • デキストロメトルファンとジフェンヒドラミンが新たに加わった(外用剤・生薬を主な有効成分とする製剤は対象外)
  • 18歳未満は小容量1個まで。対面またはビデオ通話などで説明を受けて購入する
  • 18歳以上でも、大容量の製品や複数個の購入では理由を聞かれ、対面またはビデオ通話などで説明を受ける
  • 第2類・第3類医薬品は、購入者の手の届かない場所か、専門家の目の届く範囲に陳列される

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※制度の内容や対象成分は、今後見直される場合があります。最新の情報は厚生労働省の公式情報をご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療の代替となるものではありません。気になる症状がある場合や判断に迷う場合は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。

参考文献・出典


執筆・監修

くすりやきゅー(薬剤師/病院・保険薬局で10年以上勤務)
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