OTC類似薬の負担が2027年3月から変わります――対象になる薬と、負担を求められない人

コラム

OTC類似薬の「一部保険外療養」とは、市販薬(OTC医薬品)と成分・投与経路が同じ処方薬を使うときに、薬剤費の4分の1を保険外の「特別の料金」として窓口で支払う新しい仕組みのことです。2027年(令和9年)3月の施行が想定されています。

「病院でもらっている薬が保険で使えなくなるらしい」――そんな話を耳にして、不安になった方もいるかもしれません。実は、この表現は正確ではありません。保険から完全に外れるのではなく、保険は使えるけれども、薬剤費の一部だけを自己負担に切り替えるという制度です。

2026年6月に法律が成立・公布され、8月には厚生労働省の検討会が「中間とりまとめ」を公表しました。何が対象になり、誰が対象外になるのか、かなり具体的なところまで見えてきています。この記事では、2026年9月1日時点で公表されている一次情報をもとに整理します。


OTC類似薬の見直しとは? 保険から外れるわけではありません

2026年(令和8年)6月5日、健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)が公布されました。この法律で新しくつくられたのが「一部保険外療養」という仕組みです。

厚生労働省の資料では、次のように説明されています。

  • OTC医薬品(要指導医薬品・一般用医薬品)との代替性が特に高い薬について、費用の一部を保険給付の対象としない
  • その分は「特別の料金」として、患者が保険外で負担する
  • 特別の料金は、対象となる薬剤費の4分の1

つまり、薬そのものが処方できなくなるわけでも、全額自己負担になるわけでもありません。診察や調剤の技術料、そして薬剤費の残り4分の3は、これまでどおり保険が使えます。

中間とりまとめには、「本制度は、必要な受診を行った上で、結果的に対象となる医療用医薬品が支給される場合に別途の負担を求めるものであり、一律にOTC医薬品を用いたセルフメディケーションを求めるものではない」と明記されています。受診をがまんする必要はない、という点は制度の前提として押さえておきたいところです。

いつから始まる? 2026年9月時点で決まっていること

これまでの流れと今後の予定は次のとおりです。

時期できごと
2026年6月5日健康保険法等改正法(令和8年法律第31号)公布
2026年6月25日技術的検討会の第1回開催(以降4回にわたり議論)
2026年8月6日「中間とりまとめ」公表
2026年8月6日〜20日中間とりまとめへの意見募集(パブリックコメント)
2026年8月27日社会保障審議会医療保険部会に報告
2026年9月頃制度の仕組みについてのとりまとめ(成案)予定
2027年(令和9年)3月施行(想定)

現在は、中間とりまとめを受けて医療保険部会と中央社会保険医療協議会(中医協)で議論が進んでいる段階です。細部は今後変わる可能性がありますので、最終的な内容は厚生労働省の公表資料でご確認ください。

対象になるのはどんな薬ですか?

対象となるのは、**77成分(1,042品目・2026年8月1日時点)**です。選ばれる条件は次の3つで、すべてを満たす医療用医薬品が対象になります。

  1. OTC医薬品と成分が同一であること
  2. 投与経路が同一であること(飲み薬・貼り薬・塗り薬などの経路)
  3. 一日最大用量が異ならないこと

厚生労働省が挙げている主な対応症状は、鼻炎、胃痛・胸やけ、便秘、解熱・痛み止め、風邪症状全般、腰痛・肩こり、みずむし、口内炎、皮膚のかゆみ・乾燥肌などです。実際の一覧には、鎮痛消炎剤(内服・外用)、抗アレルギー薬、総合感冒剤、胃腸薬・下剤、ビタミン剤、皮膚保湿剤、抗真菌薬、消毒薬、点眼薬などが並びます。

なお、剤形(錠剤とカプセルなど)が違うだけなら「代替性は否定されない」として対象に含まれます。一方で、成分が完全に一致しない配合剤や、医療用医薬品のほうが一日最大用量が大きいものは、代替性がないものとして対象から外れています。

同じ薬でも「何の病気に使うか」で扱いが変わります

ここが今回の中間とりまとめでもっとも実務的なポイントです。同じ成分でも、医療用医薬品とOTC医薬品とで承認されている効能・効果が違う場合があります。OTC医薬品で認められていない効能・効果を目的として処方される場合は、特別の料金の対象外とされました。

具体例を挙げます。

成分使う目的特別の料金
フェキソフェナジン塩酸塩アレルギー性鼻炎対象(負担あり)
フェキソフェナジン塩酸塩蕁麻疹、湿疹・皮膚炎などに伴うかゆみ対象外
ヘパリン類似物質進行性指掌角皮症、皮脂欠乏症など対象(負担あり)
ヘパリン類似物質血栓性静脈炎、筋性斜頸(乳児期)など対象外
酸化マグネシウム便秘症対象(負担あり)
酸化マグネシウム尿路蓚酸カルシウム結石の発生予防対象外

「自分の薬は対象か」を成分名だけで判断するのは難しい、ということがわかります。OTC医薬品が対応していない効能・効果の一覧は国が公表する方針とされていますので、気になる場合は薬剤師にたずねるのが確実です。

追加の負担を求められないのはどんな人ですか?

必要な医療が確保されるよう、幅広い配慮が整理されています。2026年8月27日の医療保険部会資料では、次のとおりまとめられました。

区分特別の料金を求められない範囲
こども18歳年度末(18歳に達した日以後最初の3月31日)までの人
がん患者がんの治療中に、がんやその治療に関連して生じた状態に使う場合
難病患者指定難病患者が、その指定難病および付随して生じた傷病に使う場合
公費負担医療の対象者国の公費負担医療を受ける際に使う場合
入院患者入院中(退院時を含む)に使う場合
処置等に伴う処方処置等と同日に新たに処方された場合(14日分まで)
低所得者生活保護受給者
妊婦・授乳婦OTC医薬品の添付文書に「服用しないこと」と記載がある薬を使う場合
長期使用医師が年間を通じた使用が医療上必要と認めている場合

がん患者については、線引きも具体的に示されています。抗がん剤治療に伴う副作用への対応や緩和ケアは対象外(負担なし)ですが、がん治療中であっても、がん治療と関連の薄い症状(花粉症、みずむしなど)や一般的な症状(便秘、風邪、腰痛など)に使う場合は対象になります。

ずっと使っている薬はどうなりますか?

「長期使用」の考え方は、飲み薬と外用薬で分けて整理されました。

**内服薬(屯服薬を除く)**は、年間の処方日数がおおむね50週であることが目安です。中間とりまとめでは、多くの成分で0〜9週といった短期の処方が大半を占める一方、50週処方されている人は「症状が季節や環境要因によらず持続し、医師の管理下で年間を通じた治療継続が行われている状態」と考えられる、と説明されています。

確認には、診療情報提供書、薬剤情報、お薬手帳、オンライン資格確認による薬剤情報などが使われます。処方歴が確認できなかった場合は原則として負担の対象になるため、お薬手帳をきちんと使っておくことの意味が、これまで以上に大きくなります。

**外用薬(軟膏、湿布など)**は、使用量に個人差が大きく処方日数が明確でないため、日数ではなく「医師が慢性・再発性の疾患に対して毎日継続して使うよう指示しているか」などを総合的に判断するとされています。抗真菌外用薬、消毒薬、ステロイド外用薬は原則として対象、点眼薬は通年性が確認できる場合は対象外、という整理です。

湿布と保湿剤には経過措置があります

鎮痛消炎剤の外用薬(湿布など)と、皮膚保湿剤・皮膚保護剤・角化症治療剤については、令和10年度末(2029年3月末)までの経過措置が設けられました。

  • 湿布など:画像検査などで慢性かつ重度の疾患であることが客観的に確認され、医師が年間を通じた疼痛管理として毎日の使用を指示している場合に限り、対象外
  • 保湿剤など:通年で使用しているうえ、症状や疾患活動性が十分に改善せず、免疫抑制剤等による全身療法を併用した治療歴(直近1年以内など)がある場合に限り、対象外

なお、アトピー性皮膚炎に対するヘパリン類似物質と尿素については、診療ガイドラインで通年使用の有効性が示されているとして、経過措置とは別に対象外と整理されています。経過措置の終了までに、ガイドラインのエビデンスや実際の処方状況を踏まえて見直しが行われる予定です。

窓口の支払いはどう変わりますか?

対象になる場合、窓口では「これまでの一部負担金」に加えて、「対象薬剤の薬剤費の4分の1」が特別の料金として上乗せされます。厚生労働省の資料には「実際の負担額は各医薬品の薬価や特別の料金への消費税などにより異なる場合がある」と注記されており、実際の金額は薬によって変わります。

もう一点、知っておくと安心なのが先発医薬品の選定療養との関係です。制度が複雑にならないよう、OTC類似薬の一部保険外療養に該当する場合は、長期収載品(先発医薬品)の選定療養の特別の料金は求めないこととされています。二重に上乗せされることはありません。

(関連記事:先発医薬品を選んだときの上乗せについては「選定療養費の増額」の記事も参考にしてください )

今のうちにできることはありますか?

制度が始まるまでにできる準備は、難しいことではありません。

  • お薬手帳を1冊にまとめて持ち歩く――長期使用の確認に使われるため、処方歴が残っていることが役立ちます(関連記事:お薬手帳のメリット
  • マイナ保険証(オンライン資格確認)を使う――薬剤情報が医療機関・薬局で共有され、年齢や公費の状況も確認しやすくなります
  • 気になる薬は、次の受診時に医師・薬剤師に確認する――対象かどうかは、成分だけでなく「何の病気に対して使っているか」で変わります
  • 自己判断で薬をやめたり、市販薬に切り替えたりしない――症状や併用薬によっては、処方薬を続けることが適切な場合があります

よくある質問(FAQ)

Q. OTC類似薬は保険が使えなくなるのですか?

A. いいえ。保険給付そのものがなくなるわけではありません。薬剤費のうち4分の1を「特別の料金」として保険外で負担する仕組みで、残りの薬剤費や診察・調剤の技術料には引き続き保険が使えます。

Q. いつから始まりますか?

A. 2027年(令和9年)3月の施行が想定されています。ただし2026年9月1日時点では、社会保障審議会医療保険部会などで細部の議論が続いており、内容が変わる可能性があります。

Q. 子どもの薬も対象になりますか?

A. 18歳年度末(18歳に達した日以後最初の3月31日)までの人に処方される場合は、特別の料金を求められない範囲として整理されています。多くの自治体でこども医療費助成が行われている点も踏まえた整理です。

Q. 花粉症の薬は市販薬に切り替えたほうがよいですか?

A. 一概には言えません。症状の重さ、ほかのアレルギー疾患の有無、併用している薬などによって適切な選択は変わりますし、同じ成分でも蕁麻疹や皮膚のかゆみに使う場合は特別の料金の対象外とされています。自己判断で切り替えず、医師または薬剤師にご相談ください。

Q. 何年も湿布や保湿剤を使っています。負担は増えますか?

A. 湿布(鎮痛消炎剤の外用薬)と皮膚保湿剤には、令和10年度末までの経過措置が設けられました。画像検査で重度の疾患が客観的に確認される場合や、全身療法を併用した治療歴がある場合など、条件を満たすと対象外になります。ご自身が該当するかは、主治医にご確認ください。

Q. 先発医薬品の選定療養と両方かかりますか?

A. かかりません。OTC類似薬の一部保険外療養に該当する場合は、長期収載品の選定療養の特別の料金は求めないこととされています。

Q. 生活保護を受けています。負担は増えますか?

A. 生活保護受給者は、最低限度の生活および治療の継続に影響を及ぼすおそれがあることなどから、特別の料金を求めない対象として整理されています。

Q. 対象かどうかは、どこで確認できますか?

A. OTC医薬品が対応していない効能・効果の一覧などは国が公表する方針とされています。現時点でご自身の薬について知りたい場合は、お薬手帳を持参して、かかりつけの薬剤師や主治医にご相談ください。

まとめ

  • **OTC類似薬の「一部保険外療養」**とは、市販薬と成分・投与経路が同じ処方薬について、薬剤費の4分の1を保険外の特別の料金として負担する仕組みです
  • 対象は77成分(1,042品目・2026年8月1日時点)。鼻炎、便秘、痛み止め、風邪症状、皮膚のかゆみ・乾燥肌などに使われる薬が中心です
  • 同じ成分でも使う目的(効能・効果)によって扱いが分かれます。成分名だけでは判断できません
  • こども(18歳年度末まで)、がん患者、指定難病患者、入院患者、生活保護受給者、妊婦・授乳婦、長期使用などは特別の料金を求められない範囲として整理されています
  • 施行は2027年(令和9年)3月が想定されていますが、細部は2026年9月以降の議論で確定します。最新情報は厚生労働省の公表資料をご確認ください

制度の見直しは、受診をがまんするためのものではありません。薬の続け方や切り替えについて迷ったときは、自己判断せず、必ず医師・薬剤師にご相談ください。


※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療の代替となるものではありません。気になる症状がある場合や判断に迷う場合は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。

※本記事の内容は2026年9月1日時点で公表されている情報に基づいています。制度の詳細は今後の審議会の議論により変更される可能性があります。

参考文献・出典

執筆・監修

くすりやきゅー(薬剤師/病院・保険薬局で10年以上勤務)
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