「薬を口に入れた途端に吐き出してしまう」「苦くて嫌だと泣いてしまう」——子どもに薬を飲ませるのが大変だと感じている保護者の方は、決して少なくありません。
クラシエ株式会社と小学館「HugKum」が0〜12歳の子どもを持つ保護者684名を対象に実施した調査では、約72%の保護者が「お子さんの服薬に苦労した経験がある」と回答しています(※1)。「逃げ回る」「吐き戻す」など苦戦するご家庭も多く、薬の飲ませ方は多くの家庭で共通の課題です。
そこで近年、市販薬にも採用されているのがチュアブル錠という剤型です。本記事では、チュアブル錠の特徴から市販薬の具体例、上手な飲ませ方のコツや薬剤師に相談するタイミングまで、保護者の方が知っておきたいポイントをまとめてご紹介します。
チュアブル錠とは?普通の錠剤との違い
チュアブル錠とは、口の中で噛み砕いて(咀嚼して)服用するタイプの錠剤です。「咀嚼錠」とも呼ばれます。日本薬局方(第19改正)では「咀嚼して服用する錠剤であり、服用時の窒息を防止できる形状とする」と定められており、安全性への配慮が製剤の設計段階から組み込まれています。
普通の錠剤や粉薬と比べたときのチュアブル錠の主な特徴は次のとおりです。
噛んで崩れやすいやわらかさ
一般的な錠剤は水で丸のみにすることを前提に作られていますが、チュアブル錠は噛み砕きやすい硬さと形に設計されています。そのため、錠剤を丸のみするのが難しい小さな子どもや、飲み込む力が弱い方でも服用しやすくなっています。
フルーツ風味など飲みやすい味付き
多くのチュアブル錠には、イチゴ・ぶどう・オレンジなどの甘い風味がつけられています。薬の苦みや独特のにおいを抑える工夫がされているため、子どもが抵抗感を持ちにくく、保護者にとっても飲ませやすい剤型です。
水なしでも飲める場合がある
製品によっては少量の水があれば服用でき、外出先や水が用意しにくい場面でも対応しやすい点もメリットのひとつです。ただし、製品によって服用方法は異なりますので、必ず添付文書を確認してください。
子ども向け市販チュアブル錠の例
現在、ドラッグストアや薬局で購入できる子ども向けのチュアブル錠には、いくつかの種類があります。以下はその代表的な例です(※使用上の注意をよく読んだうえで、用法・用量を守って使用してください)。
解熱鎮痛薬
小児用バファリンチュアブル(ライオン株式会社)は、アセトアミノフェンを有効成分とする解熱鎮痛薬です。オレンジ風味で噛み砕いて服用できるため、錠剤の丸のみが難しい子どもでも使いやすい設計になっています。3歳以上から使用できます(製品の添付文書を必ずご確認ください)。
⚠️ アセトアミノフェンは、他の市販薬や処方薬と重複して使用すると過剰摂取になる場合があります。複数の薬を使用する際は必ず薬剤師にご相談ください。
ビタミン剤・栄養補助薬
ビタミンCやビタミンDを含むチュアブルタイプのサプリメントや医薬品は、子ども向けに複数のメーカーから販売されています。グミのような食感のものも多く、子どもが比較的受け入れやすい剤型です。
口内炎・咽頭炎薬
大正口内炎チュアブル錠(大正製薬株式会社)は、内服タイプの市販薬です。口の中でゆっくり溶かしたり、噛んで使用します。7歳以上から使用できます(製品の添付文書を必ずご確認ください)
⚠️ 上記はあくまで商品の一例です。購入の際は、お子さんの年齢・体重・症状に合った製品かどうかを、薬剤師や登録販売者に確認することをおすすめします。
飲ませ方のコツ・注意点
チュアブル錠は飲みやすい剤型ではありますが、より安全に、確実に服用してもらうためのポイントを押さえておきましょう。
① 用法・用量を必ず守る
チュアブル錠は「噛んで食べる」感覚に近いため、子どもが「もっと食べたい」と言うことがあります。しかし薬は食べ物ではなく、決められた量を超えて服用すると副作用のリスクがあります。添付文書に記載されている用法・用量は必ず守り、置いておく場所にも注意しましょう。
② 必ず保護者が管理・監督する
子どもがひとりで服用するのは避け、保護者が必ず立ち会ってください。噛み砕いた後に飲み込む際、のどに詰まらせるリスクがゼロではありません。特に幼い子どもの場合は、焦らずゆっくり飲ませるよう心がけましょう。
▶ 「子どもの薬の誤飲を防ぐには?誤飲しやすい薬の種類・対処法・相談先まとめ」の記事はこちら
③ 噛み砕く前に一口飲んで口を湿らせる
口の中が乾いた状態だと噛み砕いた薬の粉末がのどに貼りつきやすくなることがあります。少量の水で口を湿らせてから噛み砕くと、飲み込みやすくなります。
④ 他の薬との飲み合わせに注意
市販のチュアブル錠を使用するときは、他に服用中の薬(処方薬・市販薬・サプリメントを含む)との飲み合わせに注意が必要です。特にアセトアミノフェン含有製品は、他の解熱鎮痛薬と重複して使用すると過剰摂取になる危険性があります。複数の薬を同時に使う場合は、必ず薬剤師か医師に相談してください。
薬剤師に相談するタイミング
「市販薬を使えばいい」と思っていても、次のような状況では薬剤師や医師への相談を優先することが大切です。
こんなときは薬剤師・医師に相談を
- 3歳未満の幼い子どもに薬を使おうとしているとき。チュアブル錠の多くは使用できる年齢が定められており、幼児には適さない製品も多くあります。
- 症状が2〜3日以上続く、または悪化しているとき。市販薬は軽い症状の緩和を目的としています。症状が長引く場合は自己判断せず受診を検討しましょう。
- アレルギーや持病があるとき。食品アレルギー(フルーツ系のフレーバーなど)や慢性疾患を持つ子どもは、使用できる成分に制限がある場合があります。
- 複数の薬を同時に使用しているとき。飲み合わせの問題は素人では判断が難しいため、専門家のチェックが必要です。
- 服用後に普段と違う様子(発疹・嘔吐・ぐったりするなど)が見られるとき。速やかに服用を中止し、医療機関を受診してください。
薬局やドラッグストアの薬剤師・登録販売者は、購入前・購入後いずれも相談に応じています。「市販薬で大丈夫かな?」と感じたときは気軽に声をかけてみましょう。
まとめ
チュアブル錠は、飲み込む力がまだ十分でない子どもや薬の苦みが苦手な子どもにとって、服用のハードルを下げる頼もしい剤型です。解熱鎮痛薬・ビタミン剤・口内炎治療薬など、さまざまなカテゴリで市販薬としても販売されています。
ただし、使いやすいからこそ用量を超えてしまうリスクや、飲み合わせへの注意が必要です。添付文書をよく読み、不安なことがあれば薬剤師に相談するという習慣を大切にしてください。子どもの体に合った薬の使い方を知ることが、家族の健康を守る第一歩になります。
参考文献・出典
- 日本薬局方(第十九改正)|厚生労働省
- チュアブル錠とは | 製薬業界 用語辞典 Answers(アンサーズ)
- 【医薬品製剤入門】チュアブル錠の基礎知識 | アイアール技術者教育研究所
- ※1 約72%の保護者が「お子さんの服薬に苦労した経験アリ」【子どもの服薬に関する調査】 | クラシエ株式会社
- 小児用バファリンチュアブル | ライオン株式会社
- 大正口内炎チュアブル錠 | 大正製薬株式会社
⚠️ 免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の医薬品の効果・効能を保証するものではありません。お子さんの症状や体質によって適切な対処法は異なります。医薬品の使用に際しては必ず添付文書をご確認のうえ、疑問点は薬剤師・医師にご相談ください。

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