緊急避妊薬(アフターピル)とは、避妊をしなかったり避妊に失敗したりした性交のあとに、妊娠する可能性を下げるために使う医薬品です。2026年2月2日から、一部の薬局・ドラッグストアで、処方箋がなくても買えるようになりました。
ただし「普通の市販薬と同じように買える」わけではありません。買える店が限られていること、その場で飲むことが決められていることなど、購入・服用には特別な条件があります。この記事では、どこで・どうやって買えるのかを、厚生労働省が公表している資料にもとづいて整理します。
なお、この記事では日本で市販されている、レボノルゲストレルを有効成分とする緊急避妊薬について説明します。医師の診療にもとづいて処方・調剤される場合は、手続きも条件も異なります。
時間が関わる薬なので、急いでいる方は「どこで買えますか?」の章から読んでも大丈夫です。
緊急避妊薬とは?
薬局で買える緊急避妊薬は、レボノルゲストレルを有効成分とする要指導医薬品です。承認されている効能・効果は「緊急避妊」で、使い方は「性交後72時間以内に本剤1錠を薬剤師から受け取り、その場で服用する」と定められています(厚生労働省 審査報告書)。
計画的な避妊の代わりに使うものではありません。厚生労働省が公開する審査報告書によれば、使用上の注意には「本剤は性交後に、緊急的に妊娠を防止するためのものです。本剤を服用した後も妊娠する可能性があります」と記載することが検討されています。計画的に避妊する場合は、低用量経口避妊薬の継続使用など避妊効果の高い方法をとるよう促す内容です。
また、販売時に渡される使用者向医薬品ガイドには「この薬を服用しても、性感染症の予防にはなりません。心配な場合は医師に相談してください」と記載されています。
この薬は、要指導医薬品のなかでも特定要指導医薬品にあたります。2025年の薬機法改正により、要指導医薬品にはオンラインでの服薬指導・販売が可能なものが出てきましたが(2026年5月1日施行)、レボノルゲストレルを有効成分とする内用剤は告示で特定要指導医薬品に指定され、販売は対面で行う必要があります。
なぜ2026年から薬局で買えるようになったのですか?
もともとは医師の処方が必要な薬でしたが、医療用の薬を市販薬に転用する「スイッチOTC化」の議論が長く続いていました。2025年8月の意見具申を経て、同年度の薬事審議会の部会で要指導医薬品としての製造販売承認を可とする判断が示され、2026年2月2日から販売が始まりました。
このとき、厚生労働省は販売にあたっての要件をあわせて定めています。どこの薬局でも売れるわけではないのは、このためです。
なお厚生労働省は、面前での服用を含む販売方法のあり方について検討を行い、一定期間後に見直しを議論するとしています。この記事の内容は2026年9月時点のものです。
どこで買えますか?
厚生労働省が、要指導医薬品である緊急避妊薬の販売が可能な薬局等の一覧をホームページで公表しています。まずはここで、近くに対応できる店があるかを確認してください。
厚生労働省は、あらかじめその薬局等に電話で連絡することを推奨しています。在庫や、販売できる薬剤師の勤務状況などを確認するためです。一覧に載っていても、行った時間に対応できるとは限りません。
この一覧は、研修を修了した薬剤師が、勤務先の管理者の許可を得たうえで厚生労働省に申告した内容にもとづいて公表されています。薬剤師が受ける研修は、公益財団法人日本薬剤師研修センターが実施する「緊急避妊薬の調剤及び販売に関する e-ラーニング」と決められています。
また厚生労働省は製造販売業者に対し、次の3つをすべて満たしていることを確認したうえで、薬局・店舗に薬を卸すよう求めています。
- 必要な研修を修了した薬剤師が勤務していること
- プライバシーへの十分な配慮、薬を飲むための飲料水の確保などに対応できる体制を整えていること
- 近隣の産婦人科医等との連携体制を築いていること
これらを満たしていない店舗には、そもそもこの薬が供給されない仕組みです。
薬局での購入はどんな流れですか?
来店してから薬を飲むまでは、おおむね次の流れになります。所要時間は店舗の状況によって変わります。
薬剤師が状況を確認します
販売できるかどうかを判断するため、薬剤師が話を聞きます。販売時には、製造販売業者が適正使用のために作成したチェックシートを用い、この薬を使ってよい状態か、飲んではいけない条件に当てはまらないかを確認します。
記入したチェックシートは、販売の記録とあわせて薬局等が2年間保存します。服用後に連携先の医療機関から問い合わせがあったときに備えるためです。
その場で1錠を飲みます
用法・用量そのものに「薬剤師から受け取り、その場で服用する」と書かれているため、持ち帰って後から飲むことはできません。包装も1包装あたり1錠と決められています。
厚生労働省は、この方法をとった理由として、性交後できる限り速やかに使うことが求められる薬であることと、検討会議で「悪用の懸念がある」旨の意見が示されていたことを挙げています。飲むための水は、薬局側が用意することになっています。
3週間後に妊娠しているかを確認します
厚生労働省は、販売する薬剤師に対し、服用の3週間後を目安に産婦人科を受診するか妊娠検査薬を使うよう、念を入れて説明することを求めています。必要に応じて、緊急避妊薬と一緒に妊娠検査薬の購入をすすめることもあるとされています。
審査報告書でも、効いたかどうかは服用後すぐにわかるものではないため、すべての使用者に対して妊娠の有無を確認するよう注意喚起が必要だとされ、陽性だった場合はできるだけ早く医療機関を受診する旨を使用上の注意に記載することが検討されています。忘れずに確認してください。
年齢制限や保護者の同意は必要ですか?
年齢制限は設けられておらず、保護者の同意も必要ありません。厚生労働省の部会資料には「使用年齢に制限は付けない」「親の同意に関わりなく、予期せぬ妊娠を希望しない若者を支援すべき観点から、親の同意は不要」と示されており、販売に関する通知でも、保護者の同意を求める要件は設けられていません。
審査報告書では、医療用医薬品の承認申請時に提出された海外の臨床試験に年齢の条件がなかったことや、緊急避妊薬が要指導・一般用医薬品として販売されている米国・ドイツなど複数の国で年齢制限がないことなどを踏まえ、年齢制限を設ける必要性は低いと判断されています。。
購入時には、使用する本人かどうかや年齢について、薬剤師ができる限り確認することとされています。ただし厚生労働省の通知では、身分証明書などによる確認は必須ではないとされています。確認できない場合は、より丁寧な服薬指導を行うこととされています。
16歳未満の場合や、短い期間に繰り返す場合
厚生労働省の通知では、性交同意年齢である16歳未満の方と、短い期間に繰り返し購入する方(目安として3か月に2回以上)については、避妊指導などの観点から産婦人科や小児科の受診をすすめることとされています。購入できない条件ではなく、受診をすすめる対応です。
また、18歳未満の方で虐待が疑われる場合には、薬局から児童相談所へ通告することとされています。
性犯罪の被害にあわれた場合
薬剤師が話を聞くなかで、性犯罪被害などのおそれがあり関係機関と連携すべきと判断した場合には、本人の同意を得たうえで、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターなどを紹介することが望ましいとされています。同意が得られない場合でも、連絡先をまとめたリーフレット等が渡されます。
性犯罪の証拠を残す必要がある場合には、薬剤師が本人にも相談したうえで、産婦人科の紹介や警察等への相談を行うこととされています。ひとりで抱え込まず、薬局の窓口を使ってください。
ワンストップ支援センターは、被害を受けた直後からの心身の治療、相談・カウンセリングなどの心理的支援、捜査関連の支援、法的支援を総合的に提供する窓口です。全国共通の電話番号や最寄りのセンターは、内閣府男女共同参画局のページで確認できます。
服用の前後に気をつけることは?
市販の緊急避妊薬の添付文書には、次の内容が記載されています。購入時に薬剤師がチェックシートで確認しますが、あらかじめ目を通しておくと相談しやすくなります。
服用してはいけない人
- 本剤または本剤の成分によりアレルギー症状を起こしたことがある人
- 肝臓病の診断を受けた人
- 妊婦
- 男性
授乳中の方は、服用しないか、服用後少なくとも24時間は授乳を避けることとされています。
服用前に薬剤師への相談が必要な人
- 医師の治療を受けている人
- 薬などによりアレルギー症状を起こしたことがある人
- 心臓病/腎臓病/食物や薬の吸収を妨げる重度の消化器疾患の診断を受けた人
- セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含む食品を摂取している人
セイヨウオトギリソウは日本では健康補助食品として販売されています。サプリメントを飲んでいる場合は、成分表示を確認して薬剤師にお伝えください。
服用後にあらわれることがある症状
次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるため、説明文書を持って医師または薬剤師に相談することとされています。
| 関係部位 | 症状 |
|---|---|
| 消化器 | 吐き気・嘔吐、下腹部痛、下痢、腹痛 |
| 精神神経系 | 頭痛、眠気、めまい、不安 |
| 生殖器 | 不正性器出血、月経異常(月経過多、月経遅延) |
| その他 | 貧血、倦怠感・疲労、浮遊感、口のかわき、熱感、手足のむくみ、乳房圧痛 |
また使用者向医薬品ガイドには、一時的に気持ちが悪くなったり嘔吐したりする場合があるとしたうえで、服用後2時間以内に嘔吐してしまった場合は医療機関を受診するよう記載されています。
妊娠の可能性を示す症状
次の場合は妊娠などの可能性があるため、速やかに医師または薬剤師に相談することとされています。
- 月経が、予定される時期から7日以上来ない場合
- 月経のような出血や、頭痛、吐き気、倦怠感、眠くなるなどの月経時・妊娠初期にみられる症状が7日以上続く場合
- 月経が予定される時期よりも早く来たり、出血量がいつもと違う場合
※ここでいう「予定される時期」は、服用する前の直近の月経が始まった日からおよそ1か月後(28日周期の場合)です。
異所性妊娠について
使用者向医薬品ガイドには、この薬のリスクではないとしたうえで、一般に妊娠のうち1〜2%の確率で異所性妊娠が起こる可能性があり、異所性妊娠であった場合は急速かつ致命的な転帰をとることがあると記載されています。
異所性妊娠かどうかは医療機関を受診しないとわからないため、妊娠が心配な場合は速やかに医療機関を受診してください。
購入時のチェックシートと、販売時に渡される説明資料で確認し、気になることは薬剤師にお伝えください。
病院やオンライン診療で受け取ることもできますか?
できます。薬局に在庫がない場合や、医師に相談したい場合は、産婦人科・婦人科を受診する方法があります。厚生労働省は、緊急避妊の対面診療が可能な産婦人科医療機関等の一覧も公表しています。
オンライン診療を受けて薬局で調剤してもらう方法もあり、こちらも対応できる薬局・薬剤師の一覧が厚生労働省のホームページに掲載されています。
医師の診療にもとづく処方・調剤と、市販薬としてのオンライン販売は別のものです。市販薬として買う場合は特定要指導医薬品にあたるため、オンラインで販売を受けることはできません。オンライン診療を利用する場合の手続きは、利用するサービスにご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. いつまでに飲めばよいですか?
A. 用法・用量は「性交後72時間以内」と定められています。厚生労働省は、性交後できる限り速やかに使うことが求められる薬だとしています。早めに薬局や医療機関にご相談ください。
Q. 家族や恋人が代わりに買いに行けますか?
A. 薬剤師は、購入する方が使う本人であることを可能な限り確認することとされています。本人が薬剤師と話し、その場で飲む必要があるため、代理で受け取ることは想定されていません。
Q. 身分証明書は必要ですか?
A. 購入時には、使用する本人かどうかや年齢について、薬剤師ができる限り確認することとされています。ただし厚生労働省の通知では、身分証明書などによる確認は必須ではないとされています。持っていない場合はその旨を薬剤師にお伝えください。
Q. 保険は使えますか?
A. 要指導医薬品として薬局で購入する場合は保険適用外で、全額自己負担になります。価格は購入前に薬局へご確認ください。
Q. 何度使っても問題ありませんか?
A. 緊急時のための薬で、計画的な避妊の方法ではありません。厚生労働省の通知では、3か月に2回以上を目安として繰り返し購入する場合は、産婦人科や小児科の受診をすすめることとされています。継続的な避妊については医師・薬剤師にご相談ください。
Q. 性感染症も防げますか?
A. 防げません。使用者向医薬品ガイドに「この薬を服用しても、性感染症の予防にはなりません。心配な場合は医師に相談してください」と記載されています。
Q. 飲んだあと、生理が来ないときはどうすればよいですか?
A. 効いたかどうかは服用後すぐにはわかりません。服用の3週間後に妊娠検査薬を使うか医療機関を受診して確認し、陽性だった場合はできるだけ早く受診してください。
まとめ
- 緊急避妊薬は2026年2月2日から、要件を満たした薬局・ドラッグストアで処方箋なしに購入できるようになりました
- 買える店は厚生労働省が一覧で公表しています。在庫と薬剤師の勤務状況の確認のため、事前の電話連絡が推奨されています
- 用法・用量としてその場で1錠を飲むことが定められており、持ち帰ることはできません
- 年齢制限も保護者の同意も不要です。購入時に本人かどうかや年齢をできる限り確認することとされていますが、身分証明書の提示は必須ではありません
- 効いたかどうかは服用後すぐにはわかりません。3週間後に妊娠しているかを必ず確認してください
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療の代替となるものではありません。気になる症状がある場合や判断に迷う場合は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。
参考文献・出典
- 厚生労働省「緊急避妊薬の調剤・販売について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/kinnkyuuhininnyaku.html
- 厚生労働省「要指導医薬品である緊急避妊薬の販売が可能な薬局等の一覧」 https://www.mhlw.go.jp/stf/kinnkyuuhininnyaku_00005.html
- 厚生労働省「緊急避妊薬を調剤・販売する薬剤師及び販売する薬局・店舗販売業の店舗について」(令和7年9月18日付け医薬総発0918第2号・医薬薬審発0918第3号) https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001565836.pdf
- 厚生労働省「『緊急避妊薬を調剤・販売する薬剤師及び販売する薬局・店舗販売業の店舗について』の一部改正について」(令和8年3月31日付け医薬総発0331第2号・医薬薬審発0331第4号) https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001683896.pdf
- 厚生労働省「令和7年度第2回 薬事審議会要指導・一般用医薬品部会 資料(緊急避妊薬のスイッチOTC化について)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001622311.pdf
- 厚生労働省「令和7年薬機法改正について(要指導医薬品関係)(参考資料)」(特定要指導医薬品の指定・令和7年厚生労働省告示第280号を含む) https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001666648.pdf
- 厚生労働省「特定要指導医薬品の販売等に係る留意事項について」(令和8年4月17日付け医薬総発0417第2号) https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001692385.pdf
- 厚生労働省「レボノルゲストレルを有効成分とする要指導医薬品である緊急避妊薬の審査報告書」 https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001622315.pdf
- 厚生労働省「緊急避妊に係る対面診療が可能な産婦人科医療機関等の一覧」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000186912_00002.html
- 内閣府男女共同参画局「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター一覧」 https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/consult.html
- レボノルゲストレルを有効成分とする要指導医薬品の添付文書 https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/products/package_insert/pdf/norlevo_1.pdf
- レボノルゲストレルを有効成分とする要指導医薬品の使用者向医薬品ガイド(使用者向情報提供資料) https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/products/package_insert/pdf/norlevo_2.pdf
執筆・監修
くすりやきゅー(薬剤師/病院・保険薬局で10年以上勤務)
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