マイコプラズマ肺炎は咳が長引く?子どもの症状と受診の目安

コラム

マイコプラズマ肺炎とは、肺炎マイコプラズマという細菌によって起こる呼吸器感染症で、熱が下がったあとも咳が3〜4週間ほど続くことがあるのが大きな特徴です。

「熱は2日で下がったのに、咳だけが2週間治らない」——秋から冬にかけて、熱が下がっても咳が続き、心配になることがあります。咳が長引くと夜も眠れず、園や学校をいつまで休ませるか迷う方も多いところです。この記事では、風邪との違い、受診の目安、抗菌薬の扱い方、登園・登校の判断を、厚生労働省や国立健康危機管理研究機構(JIHS)などの一次情報をもとに整理しました。

マイコプラズマ肺炎とは?普通の風邪とどう違うの?

原因は肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniaeという微生物です。JIHSは「自己増殖可能な最小の微生物で、生物学的には細菌に分類される」と説明しています。風邪の多くはウイルスが原因ですが、マイコプラズマは細菌の仲間です。

ただし細胞壁を持たないという特殊な性質があり、JIHSは「ペニシリン、セフェムなどの細胞壁合成阻害の抗菌薬には感受性がない」としています。壊すべき壁がないため、これらの抗菌薬は肺炎マイコプラズマには効果がないということです。以前の抗菌薬が家に残っていても、自己判断で使うことは避けてください。

潜伏期間は通常2〜3週間と長く(JIHS)、誰からうつったのか分からないことが多いのも特徴です。患者は全年齢層で報告されているものの若年層に多く、1〜14歳が全体の6〜8割を占めます(JIHS)。

風邪(感冒)インフルエンザマイコプラズマ肺炎
主な原因ウイルスインフルエンザウイルス細菌(肺炎マイコプラズマ)
潜伏期間数日程度1〜3日程度2〜3週間
熱の出方軽いことが多い急な高熱発熱で始まることが多い
咳の特徴数日〜2週間程度熱とともに出る解熱後も3〜4週間続くことがある
原因に対する薬なし(対症療法)抗ウイルス薬を使うことがある肺炎と診断された場合に抗菌薬を使うことがある

※一般的な傾向をまとめたものです。症状には個人差があり、これだけで見分けることはできません。インフルエンザについては症状と治療薬の記事もご覧ください。

どんな症状が出る?咳はいつまで続く?

JIHSは症状の経過を次のように説明しています。

初発症状は発熱、全身倦怠、頭痛などである。咳は初発症状出現後3〜5日から始まることが多く、当初は乾性の咳であるが、経過に従い咳は徐々に強くなり、解熱後も長く続く(3〜4週間)。

つまり、熱が先に出て、あとから咳が強くなり、熱が下がっても咳だけが残るという順番になりやすいということです。「治りかけのはずなのに咳がひどくなった」と感じるのは、この経過によることがあります。ただし、咳の悪化をすべて回復途中のものと自己判断するのは避けてください。悪化が続くときや息苦しさがあるときは受診が必要です。

咳以外では、嗄声(声がれ)、耳痛、咽頭痛、消化器症状、胸痛が約25%で見られ、患者の5〜10%未満で中耳炎、胸膜炎、心筋炎、髄膜炎などの合併症を発症することも報告されています(JIHS、厚労省)。頻度は高くありませんが、いつもと様子が違うと感じたときは早めに医療機関へご相談ください。

一方、厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版」では、マイコプラズマに感染した学童期の小児のうち10%は肺炎に移行する可能性があると指摘されています。裏を返せば、感染しても多くは肺炎まで進まないということです。

どうやってうつる?家庭内でうつりやすいのはなぜ?

主な感染経路は飛沫感染と接触感染です(JIHS)。近い距離で長く一緒に過ごすほどうつりやすくなると考えられています。保育園・学校・家庭など、同じ空間で長時間過ごす場所が感染の場になりやすいのはそのためです。

潜伏期間が2〜3週間と長いため、上の子が治りかけた頃に下の子が発熱するといった時間差の発症が起こりやすいのも、この感染症の特徴です。家族内では、あとから別の人が発症することを見込んでおくと落ち着いて動けます。

いつ病院に行けばいい?受診の目安は?

咳が長引くこと自体は珍しくありません。厚生労働省の手引きでは、急性気道感染症による咳は2〜3週間続くことも少なくなく、平均17.8日間持続すると報告されています。そのうえで、緊急度は症状によって大きく違います。

すぐに救急車を呼ぶことを考える様子

日本小児科学会の「こどもの救急」は、「呼吸が苦しそうで、同時に意識がぼーっとしている、唇が紫などは、救急車を呼びましょう」としています。迷ったときは、ためらわずに119番へご相談ください。

その日のうちに受診したい様子

  • 息が苦しそう、肩で息をしている、ゼーゼー・ヒューヒューという音がする
  • 顔色が悪い、ぐったりしている、水分が取れない
  • 高熱が続く、いったん下がった熱がまた上がった
  • 胸の痛みを訴える

これらは咳の続いた日数にかかわらず受診の対象です。「2週間たっていないから様子見」と考えないでください。

日中に相談したいとき

  • 熱が下がったあとに咳が悪化してきた
  • 咳が2週間以上続いている
  • 夜間の咳で眠れない日が続いている

厚生労働省の手引きでは、咳が2〜3週間以上続く場合には結核など他の病気の可能性も考慮する必要があると指摘されています。日本呼吸器学会も「これらの症状だけからマイコプラズマ感染症を診断することは困難です」としており、長引くときは一度診てもらうことをおすすめします。

治療では抗菌薬を使う?「効かない」ことがあるのはなぜ?

JIHSのIASR特集では、治療にはマクロライド系・ニューキノロン系・テトラサイクリン系の抗菌薬などが有効であるものの、小児への投与は慎重に行う必要があるため、マクロライド系抗菌薬が第一選択薬とされています。

ただし、マクロライドが効きにくい株もあります。同特集によると、国内分離株の耐性率は2012年頃に80〜90%まで上昇し、その後低下して2018〜2020年は30%台以下と報告されています。これは当時の調査結果であり、現在の耐性率を示すものではありません。

日本呼吸器学会は、抗菌薬が効いている場合「一般的には2〜3日で解熱することがほとんど」としています。飲み始めても熱が下がらない場合は、自己判断で中止せず処方した医療機関にご相談ください。

なお、「マイコプラズマかもしれない」という段階で抗菌薬を始めることは勧められていません。厚生労働省の手引き第四版には次のように書かれています。

耐性菌が増加する中で、肺炎以外のマイコプラズマ感染症に対する抗菌薬のエンピリック治療は推奨しない。

エンピリック治療とは、原因が確定する前に推定で始める治療のことです。同じ手引きでは、マイコプラズマが原因と診断された場合にはマクロライド系抗菌薬の投与が考慮されるとしたうえで、気管支炎における有用性は確立していないとも記載されています。

つまり、肺炎かどうかや症状の程度によって判断が変わるということです。必要な人に必要な抗菌薬を届け続けるため、使うかどうかは医師が診察と検査をもとに判断します。「抗菌薬が出なかった=適当な診療」ではない点も知っておいていただければと思います。

保育園・学校は休ませる?出席停止の扱いは?

学校保健安全法施行規則は、学校で予防すべき感染症を第一種〜第三種に分けています。第三種は「コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス、流行性角結膜炎、急性出血性結膜炎その他の感染症」とされ、マイコプラズマ肺炎という病名は条文に個別には挙げられていません。第三種の出席停止期間の基準は、同規則第十九条で次のように定められています。

結核、髄膜炎菌性髄膜炎及び第三種の感染症にかかつた者については、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで。

つまり、インフルエンザのような「発症後5日かつ解熱後2日(幼児は3日)」といった一律の日数基準はありません。また、かかった子どもが全員一律に出席停止になるわけでもありません。同規則第二十一条は、校長が必要と認めるときに学校医に診断させ、出席停止を指示するものと定めています。日本呼吸器学会も、出席停止は地域や学校での流行状況などを考慮し、学校医等の意見を踏まえて個別に判断されるとしています。

保育所には別の目安があります

保育所については、こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン」がマイコプラズマ肺炎を「医師の診断を受け、保護者が登園届を記入することが考えられる感染症」に位置づけ、登園のめやすを次のように示しています。

罹患した場合の登園のめやすは、「発熱や激しい咳が治まっていること」である。

咳が3〜4週間残ることもある病気なので、「咳が完全に止まるまで休む」では長期の欠席になってしまいます。学校か保育所かで扱いが変わりますので、再開の判断は通っている園・学校の方針とかかりつけ医にご確認ください。

いつ流行する感染症なの?

マイコプラズマ肺炎は感染症発生動向調査の対象で、全国の基幹定点医療機関からの報告数が毎週公表されています(IDWR)。

JIHSは「晩秋から早春にかけて報告数が多くなり」と季節性を説明しています。実際に2024年は第46週(11月)に定点当たり2.84まで上昇しました。ただし流行の時期や規模は年によって異なります。国内外の疫学調査研究では、3〜7年程度の間隔で大きな流行が起きることも報告されています(JIHS)。

いま実際にどのくらい報告されているかは、JIHSの感染症発生動向調査週報で毎週確認できます。

家庭でできる予防は?

現時点で、マイコプラズマ肺炎に有効なワクチンはありません(JIHS)。JIHSは「流行期には手洗い、うがいなどの一般的な予防方法の励行と、患者との濃厚な接触を避けること」を挙げています。

  • 帰宅後・食事前の手洗いと、咳が出ているときのマスク着用(咳エチケット)
  • タオルの共用を避ける
  • 家族に症状がある間は、寝る場所や食事の距離を少し離す
  • 部屋の換気と適度な加湿、こまめな水分補給と十分な睡眠

マイコプラズマ肺炎にワクチンはありませんが、ワクチンで備えられる感染症もあります。接種状況の管理は予防接種スケジュールの記事、インフルエンザワクチンの時期は接種時期と回数の記事をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q. マイコプラズマ肺炎は大人もかかりますか?

A. かかります。JIHSのIASR特集では「患者は全年齢層で報告されているが若年齢層に多く、1〜14歳の患者が全体の6〜8割」とされています。お子さんに多い感染症ですが、家庭内で保護者に広がることもあります。

Q. 熱が下がれば登園・登校してよいですか?

A. 学校と保育所で扱いが違います。学校では一律の日数基準はなく、学校保健安全法施行規則で第三種の感染症は「病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで」とされています。かかった子が全員一律に出席停止になるわけでもありません。保育所については、こども家庭庁のガイドラインが登園のめやすを「発熱や激しい咳が治まっていること」と示しています。いずれも、通っている園・学校の方針とかかりつけ医の判断をご確認ください。

Q. 咳止めを飲めば治りますか?

A. 咳止めは咳の症状をやわらげることを目的としたお薬で、原因となる細菌に直接働きかけるものではありません。長引く咳が続く場合は、原因を確かめるためにも医療機関を受診してください。

Q. どんな検査で分かりますか?

A. 感染症発生動向調査の届出基準では、「菌の分離・同定」「抗体検出」「核酸増幅法による遺伝子検出」「イムノクロマト法による抗原の検出」のいずれかによる診断が求められています。どの検査を行うかは医師が判断します。

Q. 抗菌薬を飲んでも熱が下がりません。どうすればよいですか?

A. 日本呼吸器学会は、抗菌薬が効いている場合は一般的に2〜3日で解熱することがほとんどとしています。改善しない・悪化する場合は、自己判断で中止せず処方を受けた医療機関にご相談ください。マクロライド系が効きにくい株も報告されており、お薬の変更を検討することがあります。

まとめ

  • 熱が下がったあとも咳が3〜4週間続くことがあるのが特徴です。潜伏期間も2〜3週間と長く、感染源が分かりにくい感染症です。
  • 患者の6〜8割は1〜14歳ですが、大人もかかります。家庭内では時間差で発症することがあります。
  • 息が苦しそう、ぐったりしている、解熱後に咳が悪化した、咳が2週間以上続くときは、早めに医療機関へご相談ください。
  • 治療はマクロライド系抗菌薬が第一選択ですが、効きにくい株もあり、肺炎以外では使わない判断もあります。要否は医師が判断します。
  • 登園・登校の扱いは学校と保育所で異なります。学校に一律の日数基準はなく、保育所の登園のめやすは「発熱や激しい咳が治まっていること」です(こども家庭庁)。
  • 息が苦しそうで唇が紫、意識がぼんやりしているときは119番を。ワクチンはないため、予防は手洗い・咳エチケット・タオルを共用しないといった基本の対策が中心です。

マイコプラズマ肺炎は咳が長引くぶん、看病も長くなりがちです。体温計や水分補給の備えなど、流行期に入る前に家にそろえておきたいものは家庭の感染症そなえリストで整理しています。

あわせて読みたい


※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療の代替となるものではありません。気になる症状がある場合や判断に迷う場合は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。

参考文献・出典

執筆・監修

くすりやきゅー(薬剤師/病院・保険薬局で10年以上勤務)
詳しいプロフィールはこちら

タイトルとURLをコピーしました