食中毒が疑われる下痢では、市販の下痢止め(止瀉薬)を自己判断で使う前に、医療機関の受診を検討してください。厚生労働省の資料では、下痢は腸の中の有害な物質を出そうとする体の防御反応でもあり、薬で無理に止めるとかえって症状の悪化を招くことがあると説明されています。
お子さんが急にお腹を壊したとき、家にある下痢止めを飲ませてよいのか迷うことがあります。夜間や休日は、受診すべきかどうかの判断もつきにくくなります。
この記事では、市販の下痢止めに含まれる成分ごとの注意点、受診の目安、家庭でできる水分補給の方法を、厚生労働省やこども家庭庁などの公的資料をもとに整理しました。判断に迷ったときの材料としてお読みください。
食中毒が疑われるとき、市販の下痢止めを使っていいですか?
結論からいうと、原因が分からないまま自己判断で使うことは避けてください。
厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月一部改訂)」では、市販の止瀉薬に使われる代表的な成分について、次のように記載されています。
- ロペラミド塩酸塩:「食べすぎ・飲みすぎによる下痢、寝冷えによる下痢の症状に用いられることを目的としており、食あたりや水あたりによる下痢については適用対象でない」
- 収斂成分(次没食子酸ビスマス、タンニン酸アルブミン等)を主体とする止瀉薬:「細菌性の下痢や食中毒のときに使用して腸の運動を鎮めると、かえって状態を悪化させるおそれがある」
ただし、これは市販の下痢止め全般が「食あたり」に使えないという意味ではありません。市販薬は成分や製品によって対象となる症状が異なり、「食あたり・水あたり」を効能に含む製品もあります。問題は、食中毒が疑われる状況で、原因が分からないまま自己判断で使ってよいかという点です。
発熱や血便があるときは、市販薬ではなく受診を
同じ手引きの受診勧奨の項目には、症状ごとの注意も書かれています。下痢に発熱を伴う場合は「食中毒菌等による腸内感染症の可能性」があり、便に血が混じっている場合は腸管出血性大腸菌(O157等)などによる腸管出血の可能性があるとされています。いずれについても、「安易に止瀉薬を用いて症状を一時的に鎮めようとするのでなく、早期に医療機関を受診して原因の特定、治療がなされるべきである」と記載されています。
病気によっては、下痢止めがはっきり避けられている
原因菌が分かっている場合には、より明確な注意が公表されています。
厚生労働省「腸管出血性大腸菌Q&A」では、市販薬について次のように書かれています。
腸管出血性大腸菌による感染症の治療には、使わない方が良いとされる薬もあります。たとえば、腸管の運動を抑える働きの下痢止め薬や痛み止め薬の中には、ベロ毒素が体外に排出されにくくするものがあります。自分の判断で薬を服用せずに医師の診察を受けましょう。
(厚生労働省「腸管出血性大腸菌Q&A」Q43より)
また、冬に多いノロウイルスについても、厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」に「止しゃ薬(いわゆる下痢止め薬)は、病気の回復を遅らせることがあるので使用しないことが望ましいでしょう」と記載されています。
ノロウイルスには効果のある抗ウイルス剤はなく、通常は対症療法が行われるとされており、特に体力の弱い乳幼児や高齢者では、脱水症状を起こさないよう水分と栄養の補給を十分に行うことが呼びかけられています。
なぜ下痢を止めてはいけないことがあるのですか?
理由は2つあります。
1つ目は、下痢が体の防御反応という側面を持つためです。 手引きには「下痢は、腸管内の有害な物質を排出するために起こる防御反応でもあり、止瀉薬によって下痢を止めることでかえって症状の悪化を招くことがある」と記載されています。
2つ目は、原因の特定より先に症状を抑えることになるためです。 手引きは「一般用医薬品の使用はあくまで対症療法であり、下痢や便秘を引き起こした原因の特定やその解消が図られることが、一般用医薬品の適正な使用を確保する上で重要である」としています。前項のとおり、発熱を伴う下痢や血便がある場合は、症状を一時的に鎮めるのではなく早期に受診して原因を特定することが勧められています。
代わりに重要とされているのが水分・電解質の補給です。手引きでも「下痢に伴って脱水症状を招きやすいため、下痢への対処においては水分・電解質の補給も重要である」とされています。薬で止めることより、脱水を防ぐことが優先されると理解しておくとよいでしょう。
すぐに受診したほうがいいのは、どんなときですか?
下痢や嘔吐が続くとき、どのタイミングで医療機関にかかるかは、症状の組み合わせで考えます。公的資料に示されている内容を、緊急度ごとに整理します。
すぐに救急車を呼ぶことが示されている状況
厚生労働省「上手な医療のかかり方」の資料は、子どもについて救急車が必要なときを挙げています。下痢・嘔吐に関係するものは次のとおりです。
- 意識がおかしい
- けいれん
- 呼吸がおかしい(声が出せない、口唇が紫色=チアノーゼ)
同資料には「①〜⑥の場合、迷っても、119番しましょう」「自分で連れて行くのが不安な時も119番しましょう」と記載されています。
なお、こども家庭庁が保育所向けに示している「保育所における感染症対策ガイドライン」では、頭を打った後に嘔吐したり意識がぼんやりしたりしているときは、横向きに寝かせて救急車を要請し、その場から動かさないとされています。けいれんが止まる気配がない場合も、すぐに救急車を呼ぶことが示されています。
至急受診が必要と考えられる状況
同じ厚生労働省の資料では、危険な嘔吐・下痢の見分け方として、次の場合に「すぐに受診」とされています。
- 突然、勢いよく「オエーッ」と3回以上吐く
- 噴水状嘔吐、胆汁性嘔吐
- ひきつけたり、意識が低下したりする
- 体重減少(10%以上は重症)
- 血便
- 強い腹痛
このほか、こども家庭庁が保育所向けに示しているガイドラインでは、血液やコーヒーのかすのような物を吐いたときや、米のとぎ汁のような白色水様便が出たときも至急受診が必要と考えられる場合に挙げられています。
脱水のサインは?
同資料は、脱水のサインとしてぼんやりして呼吸が荒い/口の中が乾き、目が落ちくぼむ/皮膚が冷たく色が悪い/皮膚をつまんだ時、戻るのに時間がかかる/12時間以上オシッコが出ない、泣いても涙が出ない/体重が3%以上減る(体重15kgで500g以上)を挙げています。
腸管出血性大腸菌に感染した場合、多く(感染の機会のあった者の約半数)はおおよそ3〜8日の潜伏期をおいて頻回の水様便で発病し、さらに激しい腹痛を伴い、まもなく著しい血便となることがあるとされています。厚生労働省は「激しい腹痛と血便がある場合には、特に注意が必要」としています。
また、症状のある人の6〜7%が、初発症状の数日から2週間以内(多くは5〜7日後)に溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症等の重症合併症を発症するといわれています。HUSは子どもと高齢者に起こりやすいとされ、初期には顔色不良、乏尿、浮腫等がみられます。意識障害があれば救急要請の対象です。
早めに相談したほうがよい状況
血便には腸管出血性大腸菌以外にもさまざまな原因があり、原因を調べるには医療機関での検査が必要です。厚生労働省も「血便は重要な注意信号の一つ」としています。自己判断で市販薬を使わず、受診して原因を確かめてください。
なお、夜間・休日に子どもの症状で判断に迷うときは、小児救急電話相談「#8000」に電話することで、小児科医師・看護師から対処の仕方や受診の判断について相談できます。
子どもが下痢や嘔吐をしているとき、家庭でできることは?
水分は「少量ずつ、頻回に」
厚生労働省「上手な医療のかかり方」の資料は、嘔吐・下痢のホームケアとして「吐いたら、すぐに飲ませない」「水分補給は少量から開始し…」という手順を示し、下痢止めは使い方要注意とも記載しています。経口補水液については「軽症から中等症の脱水の時」に使うもので、「基本的には乳幼児用イオン飲料、スポーツ飲料は使用しない」とされています。
吐いてすぐ飲ませると再び吐くことがあります。こども家庭庁のガイドライン(保育所向け)では、嘔吐して30分〜60分程度後に吐き気がなければ、様子を見ながら経口補水液などの水分を少量ずつ摂らせると示されています。
なお経口補水液は日常的に飲むものではありません。消費者庁は2025年6月5日に、日常の水分補給を目的としたものではないと注意喚起しています。
経口補水液とスポーツドリンクの違いについては、スポーツドリンクと経口補水液の違いとは?熱中症予防の使い分けと注意点で詳しくまとめています。
食事は消化のよいものを少量ずつ
同ガイドラインには保育所から家庭へ伝えるアドバイスの例も載っており、消化吸収の良いおかゆ、野菜スープ、煮込みうどん等を少量ずつゆっくり食べさせることが挙げられています。
一方、控えるべき食べ物として、脂っこい料理、糖分を多く含む料理やお菓子、香辛料の多い料理、食物繊維を多く含む料理が示されています。具体例はジュース、乳製品、肉、脂肪分の多い魚、芋、ごぼう、海草、豆類などです。
受診するときは、便の情報を持っていく
同ガイドラインは、受診時に伝えるべきこととして、便の状態(量、回数、色、におい、血液・粘液の混入状況)、子どもが食べた物、家族やクラスに同じ症状の人がいるかを挙げています。便を持参する(便のついた紙おむつでもよい)ことや、携帯で便の写真を写していくと便利であることも示されています。
家庭内での二次感染を防ぐ
食中毒の原因となる菌やウイルスには、人から人へうつるものもあります。腸管出血性大腸菌については、家庭での注意点が具体的に示されています。便の処理(おむつ交換等)には使い捨ての手袋を用い、便で汚れた下着は消毒してから家族のものとは別に洗濯します。入浴はできるだけ浴槽につからずシャワーやかけ湯を使い、乳幼児は患者の後に入浴しないようにするとされています。
嘔吐物の処理手順は、こども家庭庁のガイドラインが保育所向けに示しています。外側から内側に向かって静かに拭き取り、消毒と換気を行い、使用した手袋・マスク・エプロン・雑巾はビニール袋に密閉して廃棄する、処理後は液体石けんも用いて流水で30秒以上の手洗いを行う、という流れで、家庭でも応用できます。
嘔吐物処理セットや体温計など、家庭に備えておきたい物については家庭の感染症そなえリストにまとめています。症状が出てから買いに走らずに済むよう、落ち着いているうちに確認しておくとよいでしょう。
市販の整腸薬・下痢止めには、どんな種類がありますか?
市販薬の分類を知っておくと、「この薬は今の症状に合っているのか」を薬剤師や登録販売者に相談しやすくなります。手引きに基づいて、主な成分と注意点を整理します。
| 分類 | 主な成分 | 手引きに示されている主な注意点 |
|---|---|---|
| 整腸成分 | ビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌などの生菌成分 | 腸内細菌のバランスを整えることが目的。腸内殺菌成分と併用すると生菌成分の働きが弱められる |
| 収斂成分 | 次没食子酸ビスマス、次硝酸ビスマス、タンニン酸アルブミン等 | 収斂成分を主体とする止瀉薬は、細菌性の下痢や食中毒のときに状態を悪化させるおそれ。ビスマスは1週間以上続けて使用しない、服用時は飲酒を避ける、妊婦は使用を避けるべきとされる。タンニン酸アルブミンは牛乳アレルギーのある人は使用を避ける |
| ロペラミド塩酸塩 | ロペラミド塩酸塩 | 食あたり・水あたりによる下痢は適用対象でない。発熱を伴う下痢、血便、粘液便が続く場合は安易な使用を避ける。一般用医薬品では15歳未満の小児には適用がない。服用後は乗物又は機械類の運転操作を避ける |
| 腸内殺菌成分 | ベルベリン塩化物、タンニン酸ベルベリン、アクリノール等 | 下痢の予防で飲んだり、症状が治まったのに続けたりすると腸内環境を悪化させることもある |
| 吸着成分 | 炭酸カルシウム、天然ケイ酸アルミニウム等 | 腸管内の有害な物質を吸着させることが目的 |
※実際の製品は複数の成分を組み合わせていることが多く、パッケージの成分表示だけでは判断が難しい場合があります。購入時は薬剤師・登録販売者にご相談ください。
子どもに使うときに特に気をつけたいこと
ロペラミド塩酸塩を含む一般用医薬品には、15歳未満の小児への適用がありません。 手引きには、外国で乳幼児が過量摂取した場合に、中枢神経系障害、呼吸抑制、腸管壊死に至る麻痺性イレウスを起こしたとの報告があることが注記されています。大人用の下痢止めを子どもに減らして飲ませる、といった使い方はしないでください。
タンニン酸アルブミンに含まれるアルブミンは、牛乳に含まれるタンパク質(カゼイン)から精製された成分です。牛乳にアレルギーがある人は使用を避ける必要があります。牛乳アレルギーのあるお子さんがいるご家庭では、家族用の常備薬にこの成分が入っていないか確認しておくとよいでしょう。
使用する場合も、期間は短く
以下は、製品の対象となる症状に合っていて、使用上の注意も確認したうえで使う場合の話です。ロペラミド塩酸塩について、手引きでは「使用は短期間にとどめ、2〜3日間使用しても症状の改善がみられない場合には、医師の診療を受けるなどの対応が必要である」とされています。
これは「まず2〜3日は様子を見てよい」という意味ではありません。発熱を伴う下痢や血便があるときは、日数を待たずに受診してください。 また、使用できる日数や対象年齢は製品ごとに異なるため、実際に使う際はその製品の添付文書(説明書)の記載に従ってください。
なお、ロペラミド塩酸塩には中枢神経系を抑制する作用もあり、副作用としてめまいや眠気が現れることがあるため、乗物又は機械類の運転操作を避ける必要があるとされています。服用時の飲酒も避けることとされています。
食中毒はいつ、何が原因で起きやすいですか?
厚生労働省の食中毒統計によると、2025年(令和7年)に報告された食中毒は全国で1,172件、患者数24,727人、死者2人でした。病因物質別の事件数ではノロウイルスが462件で最も多く、次いでアニサキス280件、カンピロバクター・ジェジュニ/コリ220件となっています。
月別にみると、2025年は9月に70件(患者1,133人)、10月に66件(906人)の報告があり、暑さがやわらぐ時期にも発生が続いていることが分かります。
秋に知っておきたい主な原因
| 原因 | 主な食品・経路 | 症状の出方(公的資料による) |
|---|---|---|
| カンピロバクター | 生や加熱不足の鶏肉、調理中の二次汚染 | 潜伏期間は一般に1〜7日とやや長い。下痢、腹痛、発熱、嘔吐など。多くは1週間ほどで治癒するとされるが、乳幼児・高齢者など抵抗力の弱い方では重症化する危険性もある |
| 腸管出血性大腸菌 | 生肉、加熱不十分な肉料理、汚染された飲食物 | 潜伏期間はおおよそ3〜8日。頻回の水様便に続き激しい腹痛、著しい血便となることがある。子どもと高齢者はHUSを起こしやすい |
| アニサキス | 生の魚介類(サバ、アジ、サンマ、カツオ、イカ等) | 生食後1時間〜数日で発症。多くを占める急性胃アニサキス症では12時間以内に激しいみぞおちの痛み、吐き気、嘔吐 |
| ノロウイルス | 汚染された食品、人から人への感染 | 潜伏期間12〜48時間。主な症状は嘔吐と下痢で、多くは1〜3日で治癒するとされる。秋から冬にかけて流行 |
| きのこ(自然毒) | 野生のきのこの誤食 | 2025年は原因食品が「きのこ類」とされた食中毒が16件(患者46人)。うち10月に10件、11月に6件 |
カンピロバクターは、わが国の細菌性食中毒で近年もっとも発生件数が多い原因菌です。感染の数週間後に手足の麻痺などを起こす「ギラン・バレー症候群」を発症する場合があることも指摘されています。
アニサキスには効果的な治療薬がなく、胃アニサキス症では胃内視鏡検査時に虫体を摘出するとされています。市販薬で対応できるものではありません。
家庭で食中毒を防ぐには、どうすればよいですか?
厚生労働省は「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」を示しています。要点は次のとおりです。
- 加熱の一般的な目安は中心部の温度が75℃で1分間以上。腸管出血性大腸菌はこの加熱で死滅するとされ、カンピロバクターの予防にも中心部を75℃以上で1分間以上加熱することが示されています。ただしノロウイルスに汚染されているおそれがある二枚貝などは、中心部が85〜90℃で90秒以上の加熱が望まれるとされています
- 生の肉や魚を切った包丁・まな板は、洗ってから熱湯をかけたのち使う。肉用・魚用・野菜用と使い分けることも勧められています
- 冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は−15℃以下が目安。詰めすぎは避け、7割程度に。ただし低温で増殖が止まっても「細菌が死ぬわけではありません」とされており、早めに使い切ります
- 調理前後の食品や残った食品を室温に長く放置しない。O157は室温でも15〜20分で2倍に増えるとされています。残りものは浅い容器に小分けして早く冷やし、温め直すときも75℃以上まで加熱します
- 乳幼児やお年寄りには、加熱が十分でない食肉などを食べさせない。腸管出血性大腸菌はこれらの年齢層で重症化しやすく、死亡率も高くなるとされています
食中毒予防の三原則は、食中毒菌を「付けない、増やさない、やっつける」です。なおアニサキスは、一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても死滅しません。
抗菌薬は食中毒に効きますか?
抗菌薬(抗生物質)は細菌には作用しますがウイルスには効きません。ノロウイルスのようなウイルス性の胃腸炎に抗菌薬は効かず、逆に腸管出血性大腸菌では「抗菌薬は時に症状を悪化させることもあるため、使用するかどうかについて慎重に判断されることとされている」とこども家庭庁のガイドラインに記載されています。どちらも自己判断ではなく医師の判断に委ねる領域です。抗菌薬が効く感染症・効かない感染症の違いについてはマイコプラズマ肺炎とは?子どもの長引く咳と受診の目安でも触れています。
よくある質問(FAQ)
Q. 食中毒のとき、市販の下痢止めを飲んでもいいですか?
A. 原因が分からないまま自己判断で使うことは避けてください。厚生労働省の手引きでは、ロペラミド塩酸塩は食あたりや水あたりによる下痢が適用対象でないとされ、収斂成分を主体とする止瀉薬は細菌性の下痢や食中毒で状態を悪化させるおそれがあるとされています。発熱を伴う下痢や血便があるときは受診してください。
Q. 下痢止めを飲んだあとに車の運転をしてもいいですか?
A. 添付文書に「服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないでください」と記載されている薬は、眠気やめまいを感じていなくても、服用後は運転しないでください。ロペラミド塩酸塩についても、手引きで「乗物又は機械類の運転操作を避ける必要がある」とされています。眠気の自覚は条件ではありません。運転の予定がある場合は、服用前に薬剤師・登録販売者にご相談ください。
Q. 整腸薬なら食中毒のときに飲んでも大丈夫ですか?
A. 整腸薬は腸の調子や便通を整えることを目的とした薬で、下痢を止める薬とは目的が異なります。ただし市販薬で様子を見てよいかは症状や年齢によって変わります。ぐったりしている、発熱や血便を伴う、水分が摂れない、尿が半日以上出ないといった症状があるときは、市販薬で様子を見ずに至急受診してください。なお、生菌成分が配合された整腸薬に腸内殺菌成分が配合された止瀉薬を併用すると、生菌成分の働きが弱められるとされています。
Q. 子どもに大人用の下痢止めを少なめに飲ませてもいいですか?
A. 大人用を量だけ減らして飲ませることは避けてください。ロペラミド塩酸塩を含む一般用医薬品には15歳未満の小児への適用がありません。量を減らせば使える、というものではありません。子どもの下痢は水分補給を中心とした対応を行い、受診の目安に当てはまる症状があれば医療機関にご相談ください。
Q. 経口補水液は下痢や嘔吐のときにどう飲ませればいいですか?
A. こども家庭庁のガイドラインでは、経口補水液等を少量ずつ頻回に与えるとされています。嘔吐している場合は、嘔吐して30分〜60分程度後に吐き気がなければ、様子を見ながら少量ずつ摂らせると示されています。なお経口補水液は日常の水分補給を目的とした飲料ではありません。
Q. 食中毒になったら、保育園や学校は何日休むことになりますか?
A. 原因によって扱いが異なります。こども家庭庁のガイドラインでは、腸管出血性大腸菌感染症の登園のめやすは「医師において感染のおそれがないと認められていること」、ノロウイルス感染症の登園のめやすは「嘔吐、下痢等の症状が治まり、普段の食事がとれること」とされています。実際の扱いは、通っている園・学校の方針とかかりつけ医の判断をご確認ください。
Q. 家族にうつさないために、何に気をつければいいですか?
A. 手洗いが基本です。厚生労働省は、排便後、食事の前、下痢をしている子どもや高齢者の排泄物の世話をした後などに、せっけんと流水で十分に手洗いをするよう示しています。便の処理時に使い捨て手袋を使う、汚れた下着は家族のものとは別に洗濯するといった点も挙げられています。
Q. 魚を食べたあとに激しい腹痛が出ました。市販薬で様子を見てもいいですか?
A. アニサキスによる食中毒の可能性がある場合、市販薬で対応することはできません。アニサキス幼虫に対する効果的な治療薬はなく、胃アニサキス症では胃内視鏡検査時に虫体を摘出するとされています。生の魚介類を食べたあとに激しい腹痛があるときは、速やかに医療機関を受診してください。
まとめ
- 市販薬は製品ごとに対象症状が異なり、「食あたり・水あたり」を効能に含む製品もあります。ただし原因が分からないまま自己判断で使うことは推奨されていません。ロペラミド塩酸塩は食あたり・水あたりによる下痢が適用対象でなく、収斂成分を主体とする止瀉薬は細菌性の下痢や食中毒で状態を悪化させるおそれがあるとされています
- 下痢は腸の中の有害な物質を排出する防御反応でもあり、薬で止めるより脱水を防ぐことが重視されています。経口補水液等を少量ずつ頻回に与えるのが基本です
- ぐったりしている、発熱や血便を伴う、水分が摂れない、尿が半日以上出ないといった症状があるときは至急受診を。頭を打った後の嘔吐や意識がぼんやりしている場合、けいれんが止まらない場合は救急車を要請します
- ロペラミド塩酸塩を含む一般用医薬品は15歳未満の小児に適用がありません。タンニン酸アルブミンは牛乳アレルギーのある人が避けるべき成分です
- 予防の基本は「付けない、増やさない、やっつける」。加熱の一般的な目安は中心部75℃で1分間以上、ノロウイルスのおそれがある二枚貝などは85〜90℃で90秒以上です。アニサキスは酢・塩・醤油・わさびでは死滅しません
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療の代替となるものではありません。気になる症状がある場合や判断に迷う場合は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。
参考文献・出典
- 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月一部改訂)」第3章(整腸薬・止瀉薬の配合成分および受診勧奨は冊子103〜112ページ) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082537.html(参照 2026.9.15)
- 厚生労働省「食中毒統計資料」令和7年(2025年)食中毒発生状況(月別は②、原因食品別月別は③、病因物質別月別は④の各シート) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html(参照 2026.9.15)
- 厚生労働省「腸管出血性大腸菌Q&A」(最終改訂 令和3年12月17日/発生状況は令和8年6月30日更新) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177609.html(参照 2026.9.15)
- 厚生労働省「カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/campylobacterqa.html(参照 2026.9.15)
- 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」(最終改訂 令和3年11月19日) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html(参照 2026.9.15)
- 厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」および「アニサキス食中毒に関するQ&A」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html(参照 2026.9.15)
- 厚生労働省「腸管出血性大腸菌O157等による食中毒」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/daichoukin.html(参照 2026.9.15)
- こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」2023年5月一部改訂・2023年10月一部修正(発熱・下痢・嘔吐時の対応は冊子76〜78ページ、腸管出血性大腸菌感染症は53ページ、ノロウイルス感染症は60ページ) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/cd6e454e/20231010_policies_hoiku_25.pdf(参照 2026.9.15)
- 消費者庁「経口補水液に係る注意喚起について」(2025年6月5日 記者会見要旨) https://www.caa.go.jp/notice/statement/arai/042633.html(参照 2026.9.15)
- 厚生労働省「上手な医療のかかり方」プロジェクト資料(救急車が必要なとき、危険な嘔吐・下痢の見分け方、脱水、嘔吐・下痢のホームケア) https://kakarikata.mhlw.go.jp/assets/pdf/slide.pdf(参照 2026.9.16)
- 厚生労働省「子どもの症状は♯8000(上手な医療のかかり方)」 https://kakarikata.mhlw.go.jp/kakaritsuke/8000.html(参照 2026.9.15)
執筆・監修
くすりやきゅー(薬剤師/病院・保険薬局で10年以上勤務)
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