ヘパリン類似物質の市販薬と処方薬は何が違う?効能・使えない人・2027年3月からの負担

市販薬の選び方

ヘパリン類似物質だけを有効成分とする市販薬と処方薬は、濃度(0.3%)は同じですが、承認されている効能・効果が異なります。処方薬には、市販薬の効能・効果にない効能(血栓性静脈炎など)があり、2027年3月からは処方薬の費用のしくみも変わります。

皮膚科などで処方されたヘパリン類似物質の保湿剤が残り少なくなり、「ドラッグストアで売っているものと同じなら、市販薬でもいいのでは」と考えることもあります。

この記事では、PMDA(医薬品医療機器総合機構)に掲載されている添付文書と厚生労働省の資料をもとに、市販薬と処方薬の違いと、替えるときに確認したいことをまとめます。

  1. ヘパリン類似物質とはどんな成分?
  2. 市販薬と処方薬で同じところは?
  3. 違うところ①:効能・効果は?
    1. 厚生労働省は、どの効能を「市販薬にない」と整理している?
  4. 違うところ②:剤形・配合成分・区分は?
    1. 剤形
    2. ヘパリン類似物質以外の成分
    3. リスク区分
  5. 処方薬から市販薬に替えるときは、何を確認すればいい?
    1. 1.処方された目的が、市販薬の効能・効果に含まれるか
    2. 2.「してはいけないこと」に当てはまらないか
    3. 3.「相談すること」に当てはまらないか
    4. 4.子どもや妊娠中の人に使うとき
    5. 5.長く処方を受けている人は、実績の数え方にも注意
  6. 2027年3月から、処方薬の負担はどう変わる?
    1. ヘパリン類似物質の処方薬は「特別の料金」の対象
    2. この制度の特別の料金を求められない場合
  7. 市販薬で様子を見ずに、受診や相談をしたほうがいいのは?
  8. よくある質問(FAQ)
    1. Q. 市販のヘパリン類似物質は、処方薬と同じ成分・濃度ですか?
    2. Q. 病院でもらったヘパリン類似物質がなくなったら、市販薬で代わりになりますか?
    3. Q. 2027年3月から、処方されるヘパリン類似物質は全額自己負担になりますか?
    4. Q. 子どもに処方されているヘパリン類似物質も、負担が増えますか?
    5. Q. 顔に使ってもいいですか?
    6. Q. 妊娠中・授乳中でも使えますか?
  9. まとめ
  10. あわせて読みたい
  11. 参考文献・出典

ヘパリン類似物質とはどんな成分?

厚生労働省の「登録販売者試験問題の作成に関する手引き」(以下、厚労省の手引き)は、ヘパリン類似物質を、患部局所の血行を促すことを目的とした「血行促進成分」として挙げています。あわせて、抗炎症作用や保湿作用も期待されるとしています。

医療用のヘパリン類似物質製剤の添付文書では、ゲル剤以外の薬効分類名は「血行促進・皮膚保湿剤」です。

一方で、ヘパリン類似物質には血液が固まるのを抑える働きがあります。厚労省の手引きは、出血しやすい人、出血が止まりにくい人、出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑症など)の診断を受けた人では、使用を避ける必要があるとしています。

保湿剤全体の中での位置づけ(ヘパリン類似物質・尿素・ワセリンの違い)は、乾燥肌の保湿剤はどう選ぶ?でまとめています。

市販薬と処方薬で同じところは?

2026年10月20日にPMDAで成分名「ヘパリン類似物質」を検索した結果は90件でした。掲載1件を1件として数えると、医薬品88件(単剤42件、配合剤46件)と医薬部外品2件です。この記事の件数は検索結果の掲載件数で、現在流通している製品の総数ではありません。

このうち、ヘパリン類似物質だけを有効成分とする単剤42件と、医療用の添付文書を比べると、次の点が共通していました。

項目処方薬(医療用)市販薬(単剤42件)
濃度0.3%(1g中にヘパリン類似物質3mg)42件すべてが0.3%(100g中0.3g)
使えない人出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑病等)の患者、僅少な出血でも重大な結果を来すことが予想される患者(禁忌)42件すべてが、出血性血液疾患の人は使用しないとしている。わずかな出血でも重大な結果をきたすことが予想される人も使用しないとするものが多い(42件中33件)
使う回数1日1〜数回42件すべてが1日1〜数回

※医療用のフォーム剤には、噴射剤を除いた「原液1g中」の量で表示されているものがあります。成分・分量の詳しい表示は、使用する製品の添付文書で確認してください。

表の「使えない人」に当てはまる場合は、市販薬を使用しないでください。医療用のヘパリン類似物質製剤でも禁忌とされています。処方を受けている場合は、その病気や状態を主治医・薬剤師に伝え、使用前に確認してください。

違うところ①:効能・効果は?

まず、承認されている効能・効果が異なります。それぞれの添付文書に書かれている効能・効果は次のとおりです。

処方薬(医療用・ゲル剤以外)の効能・効果

  • 血栓性静脈炎(痔核を含む)
  • 血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患(注射後の硬結並びに疼痛)
  • 凍瘡
  • 肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と予防
  • 進行性指掌角皮症
  • 皮脂欠乏症
  • 外傷(打撲、捻挫、挫傷)後の腫脹・血腫・腱鞘炎・筋肉痛・関節炎
  • 筋性斜頸(乳児期)

※医療用のゲル剤(3件)の効能・効果には、皮脂欠乏症が含まれていません。

市販薬(単剤42件)の効能・効果

  • 手指のあれ
  • ひじ・ひざ・かかと・くるぶしの角化症
  • 手足のひび・あかぎれ
  • 乾皮症
  • 小児の乾燥性皮膚
  • しもやけ(ただれを除く)
  • 傷・火傷のあとの皮膚のしこり・つっぱり(顔面を除く)
  • 打ち身・捻挫後のはれ・筋肉痛・関節痛

※言い回しは製品によって少しずつ異なります(「打身」「きず」など)。上は確認した中で最も多かった表記です。

2つのリストは、それぞれの添付文書の記載を並べたものです。上から同じ順番の項目どうしが対応するという意味ではありません。

厚生労働省は、どの効能を「市販薬にない」と整理している?

2027年3月から始まる「OTC類似薬の一部保険外療養」について、厚生労働省は通知(令和8年9月30日 保医発0930第6号)を出しています。通知は、治療目的が明らかに異なる場合などを除き、原則として処方薬と市販薬の効能・効果は対応するものとして整理したとしています。そのうえで、ヘパリン類似物質では次の3つを「特別の料金の対象外となる効能・効果」としています。

  • 血栓性静脈炎
  • 血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患(注射後の硬結並びに疼痛)
  • 筋性斜頸(乳児期)

また通知は、アトピー性皮膚炎に伴う皮脂欠乏症・進行性指掌角皮症として使用されている場合を、市販薬の効能・効果に含まれる「手指のあれ、ひび、乾皮症」と実質的に対応するものと整理しています。これは保険の負担を判断するための整理で、市販薬の効能・効果に「アトピー性皮膚炎」が加わったわけではありません。この場合、ほかの対象外の条件に当てはまらなければ、原則として特別の料金の対象になります(対象外の条件は後の章で説明します)。

違うところ②:剤形・配合成分・区分は?

剤形

PMDAに掲載されている医療用の製剤には、軟膏、クリーム、油性クリーム、ローション、外用スプレー、泡状スプレー(フォーム)、ゲルがあります。市販薬にも、製品名で見ると、クリーム、ローション、乳液、スプレー、泡(フォーム)、ゲルなどがあります。添加物は製品によって異なるため、使用感は実際に確かめてください。

ヘパリン類似物質以外の成分

前述の検索結果のうち、医薬品88件中46件は、ヘパリン類似物質のほかに別の有効成分も配合したものです。配合されている成分には、ジフェンヒドラミン、グリチルリチン酸二カリウム、アラントイン、トコフェロール酢酸エステル、パンテノール、クロタミトン、ビタミンA油などがあります。

配合成分が違うと、効能・効果や使用上の注意が変わることがあります。処方薬から市販薬に替えるときは、外箱の「成分・分量」欄で、ヘパリン類似物質だけの製品か、ほかの成分も入った製品かを確認してください。

このほか、ヘパリン類似物質を配合した医薬部外品もあります(検索結果では2件)。この2件の添付文書に書かれている効能は「肌あれ」「皮膚の乾燥を防ぐ」などで、医薬品の効能・効果とは異なります。

リスク区分

検索結果の医薬品88件は、すべて第2類医薬品でした。第2類医薬品の意味や、外箱の表示の見方は、市販薬の「第1類」「第2類」とは?で解説しています。

処方薬から市販薬に替えるときは、何を確認すればいい?

処方薬は、医師の診察を受けて処方される薬です。治療中の薬を自己判断でやめたり替えたりせず、次の点を確認したうえで主治医・薬剤師にご相談ください。

1.処方された目的が、市販薬の効能・効果に含まれるか

前の章の3つの効能(血栓性静脈炎など)を目的に処方されている場合は、市販薬に替えず、主治医にご相談ください。目的がわからないときは、お薬手帳や薬の説明書を持って医師・薬剤師に確認してください。

2.「してはいけないこと」に当てはまらないか

前述の出血に関する条件のほか、市販薬の添付文書では、次のような部位を使用しない部位としています。

  • 目、粘膜(口腔、鼻腔、膣など)(単剤42件中41件)。目の周囲も使用しない部位とするものがあります(42件中25件)
  • 出血のある傷口(記載のある製品があります)
  • 顔面にある傷あと、やけどのあと(記載のある製品があります)

使用しない部位は製品ごとに添付文書で確認してください。処方薬の添付文書には、潰瘍・びらん(皮膚がただれた状態)の面に直接塗らないこと、スプレー剤では顔面・頭部など吸入する可能性のある患部には注意して使うことなどが書かれています。

3.「相談すること」に当てはまらないか

単剤42件はすべて、次の人は使用前に医師、薬剤師または登録販売者に相談するとしています。

  • 医師の治療を受けている人
  • 薬などによりアレルギー症状を起こしたことがある人
  • 湿潤やただれのひどい人

いま皮膚の病気で通院している人は、「医師の治療を受けている人」にあたります。市販薬に替える前に、主治医か薬剤師にご相談ください。

4.子どもや妊娠中の人に使うとき

単剤42件はすべて、小児に使用させる場合には保護者の指導監督のもとで使用させるとしています。

処方薬の添付文書には、妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用すると書かれています。妊娠中・授乳中の人は、使用前に医師・薬剤師にご相談ください。

5.長く処方を受けている人は、実績の数え方にも注意

厚生労働省の通知は、後の章で説明する「年間を通じた継続使用」の実績を、医療用医薬品の使用歴のみで判断するとしています。市販薬の使用状況は医師が把握しにくいためです。アトピー性皮膚炎などで処方を受け続けている人は、市販薬への切り替えを主治医に相談してから決めてください。

2027年3月から、処方薬の負担はどう変わる?

ヘパリン類似物質の処方薬は「特別の料金」の対象

2027年(令和9年)3月1日から、市販薬と成分・投与経路が同じで、1日の最大用量が異ならない医療用医薬品は、「OTC類似薬の一部保険外療養」の対象になります。厚生労働省の対象医薬品リストには、ヘパリン類似物質について、統一名を含む36件の記載があります。

対象の薬を処方されると、その薬の薬価の4分の1に投薬全量をかけた額が、保険外の「特別の料金」になります。残りの部分は保険の対象で、通常の自己負担割合での支払いが別にかかります。

厚生労働省の事務連絡には、薬価が1gあたり11.90円のクリームを25g入り2本処方された場合の計算例が示されています。この例では、特別の料金は150円です(2.98円×25g×2本=149円を、端数処理して150円)。特別の料金にかかる消費税の取扱いは、2026年末を目途に示されることになっています。

この制度の特別の料金を求められない場合

通知では、この制度の特別の料金を求めない場合が定められています。ヘパリン類似物質に関係する主なものは次のとおりです。

  • 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの人への処方
  • 市販薬にない効能・効果(前述の3つ)を目的とした処方
  • アトピー性皮膚炎の治療のため、医師の指示のもとで毎日使用し、年間を通じた継続使用の実績が認められる場合。この実績は、1年分の処方実績がなくても、半年間の使用の継続が確認され、年間を通じた長期使用が医療上必要と医師が認めていればよいとされています
  • 皮膚保湿剤・皮膚保護剤・角化症治療剤で、症状等が十分に改善せず、免疫抑制剤等による全身療法を直近1年以内に併用した治療歴がある場合であって、医師の指示のもとで毎日使用し、年間を通じた継続使用の実績が認められる場合(当面の間、令和10年度末〈2029年3月末〉まで)

通知は、この「半年間」の服薬歴について、ほかの医療機関での服薬歴も、お薬手帳やオンライン資格確認による薬剤情報など、診療時に患者が示す情報をふまえて加味できるとしています。お薬手帳の役割はお薬手帳は本当に必要?で解説しています。

がん・指定難病・入院中の処方など、ほかの対象外の場合や制度の全体像は、OTC類似薬の負担が2027年3月から変わりますをご覧ください。

なお通知は、この制度の対象外であっても、患者の希望で長期収載品を使う場合は、別の制度である「長期収載品の選定療養」の対象になるとしています。長期収載品と後発医薬品の薬価の差額の一定割合を、特別の料金とする制度です。

選定療養のしくみは2026年6月から選定療養費が増額!で解説しています。自分が対象になるかどうかは、主治医にご確認ください。

市販薬で様子を見ずに、受診や相談をしたほうがいいのは?

単剤42件の添付文書には、次のように書かれています。

  • 使用後に発疹・発赤、かゆみ、はれなどがあらわれた場合は、副作用の可能性があるので、直ちに使用を中止し、医師、薬剤師または登録販売者に相談する
  • 5〜6日間使用しても症状がよくならない場合は、使用を中止し、医師、薬剤師または登録販売者に相談する

日数の目安は、使用する製品の添付文書に従ってください。症状が悪化したときは、その日数を待たずにご相談ください。

乾燥肌で受診を考えたい症状(かき壊した跡がある、湿疹になっているなど)は、乾燥肌の保湿剤はどう選ぶ?の「市販薬ではなく受診を考えたほうがいいのは?」でまとめています。

よくある質問(FAQ)

Q. 市販のヘパリン類似物質は、処方薬と同じ成分・濃度ですか?

A. ヘパリン類似物質だけを有効成分とする市販薬(PMDAの検索結果の単剤42件)は、すべて処方薬と同じ0.3%でした。ただし、同じ成分・濃度でも、それだけで同じ薬とはいえません。承認されている効能・効果は異なります。ほかの成分を配合した市販薬もあるため、外箱の成分・分量欄で確認してください。

Q. 病院でもらったヘパリン類似物質がなくなったら、市販薬で代わりになりますか?

A. 処方された目的によって異なります。処方薬には血栓性静脈炎など、市販薬の効能・効果にない効能があります。また、市販薬の添付文書は、医師の治療を受けている人は使用前に相談するとしています。通院中の人は、主治医か薬剤師にご相談ください。

Q. 2027年3月から、処方されるヘパリン類似物質は全額自己負担になりますか?

A. 全額ではありません。薬価の4分の1に投薬全量をかけた額が「特別の料金」になり、残りの部分は保険の対象として通常の自己負担割合で支払います。この制度の特別の料金を求められない場合もあります。

Q. 子どもに処方されているヘパリン類似物質も、負担が増えますか?

A. 通知では、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの人への処方は、この制度の特別の料金の対象外です。子どもに市販薬を使う場合は、保護者の指導監督のもとで使用させ、迷うときは薬剤師にご相談ください。

Q. 顔に使ってもいいですか?

A. 顔に使う前に、使う目的と部位を製品の添付文書で確認してください。単剤42件中41件は目・粘膜を使用しない部位とし、目の周囲も使用しないとするものがあります(25件)。また、効能・効果の「傷・火傷のあとの皮膚のしこり・つっぱり」は42件すべてで顔面が除かれています。その目的で顔に使用しないでください。処方薬は主治医・薬剤師に確認してください。

Q. 妊娠中・授乳中でも使えますか?

A. 処方薬の添付文書には、妊婦などには治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用すると書かれています。妊娠中・授乳中の人は、処方薬・市販薬のどちらも使用前に医師・薬剤師にご相談ください。

まとめ

  • ヘパリン類似物質だけの市販薬と処方薬は、濃度(0.3%)が同じで、出血性血液疾患の人などが使えない点も共通しています
  • 効能・効果は異なり、処方薬には血栓性静脈炎など、市販薬の効能・効果にない効能があります
  • 市販薬に替えるときは、成分・分量、使用しない部位、相談することを添付文書で確認してください
  • 2027年3月1日から、処方薬は薬価の4分の1×投薬全量が「特別の料金」になります(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの人などは、この制度の対象外)
  • 通院中の人や、処方の目的がわからない人は、市販薬に替える前に主治医・薬剤師にご相談ください

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※添付文書の内容は、2026年10月20日にPMDAの添付文書情報で確認したものです。添付文書は改訂されることがあるため、使用する製品の最新の添付文書に従ってください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療の代替となるものではありません。気になる症状がある場合や判断に迷う場合は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。

参考文献・出典


執筆・監修

くすりやきゅー(薬剤師/病院・保険薬局で10年以上勤務)
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