薬の正しい保管方法とは?温度・湿度・光から守る3つの原則

コラム

薬の正しい保管方法とは、高温・湿気・光を避けて、子どもの手の届かない場所に、元の容器のまま置いておくことです。独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)も、処方された薬について「一般には、直射日光や湿気を避けて涼しい場所に保管します」としています。

薬をどこに置いているか、思い浮かべてみてください。洗面台の棚、キッチンの引き出し、テーブルの上のカゴ。どれも「取り出しやすさ」で選んだ場所ではないでしょうか。

薬は繊細です。保管環境が悪いと、成分が変化したり、本来の効き目が得られなくなることがあります。しかも、見た目ではほとんど気づけません。

この記事では、家庭でできる薬の保管方法を、温度・湿気・光の3つの原則にそって整理します。避けるべき場所、種類ごとの違い、子どもや高齢の家族がいる場合の注意点まで、順番に見ていきましょう。

薬の保管の基本は何ですか?

押さえるべきは3つだけです。高温を避ける・湿気を避ける・光を避ける。この3つが、薬の品質を守る柱になります。

1. 温度

薬の説明書に書かれている「室温」「常温」「冷所」には、それぞれ決められた温度があります。日本薬局方の通則では次のように定められています。

表示温度
常温15〜25℃
室温1〜30℃
冷所1〜15℃(別に規定するものを除く)

多くの飲み薬は「室温保存」です。つまり30℃を超える場所は適していません。夏場のリビングや車の中は、これを簡単に超えます。

逆に、指示がないのに冷蔵庫へ入れるのも避けてください。出し入れのたびに結露が起き、かえって湿気を与えてしまうことがあります。

2. 湿気

湿気を吸うと、錠剤が崩れたり、粉薬が固まったり、カプセルどうしがくっついたりします。特に分包された漢方薬は吸湿しやすいので注意が必要です。乾燥剤が入っている薬は、捨てずに一緒に保管してください。

3. 光

紫外線は成分を分解します。処方薬が茶色い容器に入っていたり、遮光袋に入って渡されたりするのは、光を遮るためです。袋から出して透明なケースに移し替えるのは、この工夫を無効にする行為にあたります。

薬を置いてはいけない場所はどこですか?

「取り出しやすいから」という理由で選ばれがちな、避けたい場所を挙げます。

洗面所・浴室まわり

もっとも避けたい場所です。お湯を使うたびに湿度と温度が上がり、薬にとっては厳しい環境になります。歯みがきや洗顔のついでに飲めるので置いてしまいがちですが、別の場所へ移しましょう。

車の中

夏の車内は非常に高温になります。室温保存の上限である30℃を大きく超えるため、薬の常備場所としては適していません。「防災用に車へ積んでおく」という方もいますが、薬については家の中の涼しい場所のほうが安全です。

日の当たる窓辺・棚の上

見た目はすっきりしますが、直射日光が当たります。曇りの日でも紫外線は届いています。

キッチンのコンロまわり・冷蔵庫の上

熱がこもりやすい場所です。冷蔵庫の上は放熱で温かくなることがあります。

では、どこがよいのか。寝室や廊下の収納など、直射日光が当たらず、温度変化が少なく、水を使わない場所が向いています。

薬の種類によって保管方法は変わりますか?

変わります。基本の3原則は共通ですが、剤形ごとに気をつける点があります。

種類気をつけること
処方された飲み薬元の袋・容器のまま保管する。名前や用法が書かれているため、移し替えると取り違えのもとになる
市販の飲み薬箱と説明書を一緒に保管する。使用期限と用法を確認できる状態にしておく
シロップ剤開封後は品質が変わりやすい。表示や薬剤師の説明に従う。指示があれば冷蔵庫へ
点眼薬遮光袋の指定があるものは袋のまま。開封後の使用期間は製品によって異なる
坐薬体温で溶けるように作られているため熱に弱い。冷所保存の指示があるものは冷蔵庫へ
軟膏・クリーム高温で分離することがある。チューブの口を清潔に保つ

判断に迷ったら、薬の袋・箱・説明書の「貯法」または「保管方法」の欄を見てください。そこに書かれていることが、その薬にとっての正解です。書かれていない、読めない場合は、かかりつけの薬局に聞けば確認できます。

冷蔵庫に入れる薬はどう見分けますか?

指示があるものだけを冷蔵庫に入れます。自己判断で入れないでください。

見分け方はシンプルで、次の3か所を見ます。

  • 薬の袋や箱の「冷所保存」「2〜8℃で保存」などの表示
  • 薬局でもらった説明書(薬剤情報提供文書)
  • 市販薬の外箱の「保管及び取扱い上の注意」

冷所保存の薬を常温に置くと品質が変わることがあり、逆に、常温保存の薬を冷蔵庫に入れると結露で湿気を吸うことがあります。どちらも「よかれと思って」起きる失敗です。

冷蔵庫に入れる場合は、ドアポケットではなく庫内の奥へ。ドアポケットは開閉のたびに温度が変わります。あわせて、食品と混ざらないよう小さな箱にまとめておくと安心です。

停電で冷蔵庫が止まったときの扱いは、停電・断水のとき、薬はどう管理する?で詳しく解説しています。

子どもや高齢の家族がいる場合、何に気をつければよいですか?

PMDAは、「子供の手の届かない場所に保管しましょう」と呼びかけています。家庭内での薬の事故は、置き場所で防げるものが少なくありません。

子どもがいる家庭

  • 目線より高い場所か、扉のある収納に入れる
  • ラムネやグミに似た見た目の薬もあります。お菓子と同じ場所に置かない
  • 誤飲したときのために、薬の箱や説明書をすぐ持ち出せるようにしておく

子どもの誤飲については子どもの薬の誤飲を防ぐには?にまとめています。

高齢の家族がいる家庭

  • 一日分・一回分ごとに分けられるお薬カレンダーやピルケースを使う(ただし、ケースに移すのは当日から数日分までにとどめ、残りは元の袋で保管すると品質面でも安心です)
  • 複数の医療機関から薬が出ている場合は、お薬手帳を1冊にまとめる
  • 飲み忘れ・飲み間違いが増えてきたら、かかりつけ薬局に相談する

なお、PMDAは「残ったくすりを絶対に他の人に渡したり、他の人からもらったりしてはいけません」としています。家族間であっても同じです。

古くなった薬はどうすればよいですか?

使用期限を過ぎた薬は使わないでください。期限内であっても、変色している、においが変わった、錠剤が欠けている、シロップが分離しているといった変化があるものは使用を控え、薬剤師にご相談ください。

期限の確認は、季節の変わり目に年2回など、時期を決めておくと続きます。防災用の持ち出し袋に入れた薬も、このタイミングで一緒に見直すとよいでしょう(防災リュックに入れる薬と衛生用品リスト)。

処分の方法は、お住まいの自治体のルールに従ってください。分別の区分は市区町村によって異なります。薬局で回収している場合もあるため、量が多いときや判断に迷うときは、かかりつけの薬局に相談してみてください。

薬をすっきり整理するには?

保管場所が決まったら、次は整理です。ここがうまくいくと、期限切れも飲み忘れも減ります。

  • 「毎日飲む薬」「症状が出たときの薬」「外用薬」の3つに分ける
  • 家族が複数いるなら、人ごとに分ける(取り違え防止になります)
  • 使用期限が近いものを手前に置く

100円ショップや無印良品のケースを使った具体的な整理方法は、薬の収納グッズおすすめ|セリア・無印良品で薬棚すっきり整理で写真付きで紹介しています。

よくある質問(FAQ)

Q. 薬は冷蔵庫に入れておけば安心ですか?

A. いいえ。冷所保存の指示があるものだけにしてください。指示がない薬を冷蔵庫に入れると、出し入れのたびに結露が起き、湿気を吸ってしまうことがあります。

Q. 元の袋から出して、ピルケースにまとめてもよいですか?

A. 飲み忘れ防止には有効ですが、当日から数日分までにとどめるのが安心です。長期間入れっぱなしにすると、湿気や光の影響を受けやすくなります。遮光袋に入っている薬は、袋から出さないでください。

Q. 洗面台に置いていました。もう使えませんか?

A. 見た目や状態に変化がなければ、ただちに使えなくなるわけではありません。ただし今後は別の場所へ移してください。錠剤がベタつく、変色している、においが変わったといった変化がある場合は、薬剤師にご相談ください。

Q. 使用期限が切れた薬は、どのくらいまでなら使えますか?

A. 期限を過ぎた薬は使わないでください。 効き目や安全性が保証されているのは期限内までです。もったいなく感じても、処分して新しいものに入れ替えましょう。

Q. 家族が同じ症状です。残っている薬をあげてもよいですか?

A. できません。PMDAも、残った薬を他の人に渡したりもらったりしてはいけないとしています。症状が似ていても、体質や持病、飲み合わせによって適した薬は異なります。

Q. 説明書をなくしてしまい、保管方法がわかりません。

A. 薬の袋や箱に「貯法」の記載がないか確認してください。それでもわからない場合は、かかりつけの薬局に問い合わせれば確認できます。薬の名前が読み取れれば、電話でも回答できることが多いです。

Q. 旅行や外出に薬を持ち歩くときの注意は?

A. 高温になる場所を避けることが第一です。夏場の車内やバッグの外ポケットは避け、直射日光の当たらない場所に入れてください。冷所保存の薬を持ち歩く場合は、保冷剤の使い方を含めて事前に薬剤師にご相談ください。

まとめ

  • 薬の保管は高温・湿気・光を避けるの3原則。困ったら薬の袋や箱の「貯法」を見る
  • 「室温」は1〜30℃、「冷所」は1〜15℃(日本薬局方の通則)。夏の室内や車内は室温の範囲を超えます
  • 洗面所・車の中・日の当たる窓辺は避ける。寝室や廊下の収納など、涼しく乾いた場所へ
  • 元の袋・容器のまま保管する。遮光袋や乾燥剤は捨てない。ピルケースに移すのは数日分まで
  • 子どもの手の届かない場所に置き、残った薬を人に渡さない。期限切れは自治体のルールに従って処分する

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療の代替となるものではありません。気になる症状がある場合や判断に迷う場合は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。

参考文献・出典

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執筆・監修

くすりやきゅー(薬剤師/病院・保険薬局で10年以上勤務)
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