インフルエンザとは、インフルエンザウイルスに感染して起こる病気で、38℃以上の発熱・頭痛・関節痛・全身のだるさが比較的急に現れるのが特徴です。厚生労働省は2026年8月28日、全国の定点当たり報告数が流行開始の目安を上回り、インフルエンザが流行入りしたと発表しました。
「まだ8月なのに?」と驚いた方も多いと思います。インフルエンザは冬の病気というイメージが強いぶん、夏休みの終わりに流行の話題が出ると身構えてしまいますよね。この記事では、いまの流行状況と、お子さんが熱を出したときにすぐ役立つ「受診の目安」「薬で気をつけること」「保育園・学校を休む期間」を、厚生労働省と国立健康危機管理研究機構(JIHS)の情報をもとに整理しました。
予防接種については別の記事(インフルエンザの予防接種はいつ受ける?)でまとめています。
「流行入り」とは?いまどのくらい増えているの?
厚生労働省の報道発表によると、2026年第34週(8月17日〜23日)の全国の定点当たり報告数は1.11で、報告数は4,094人でした。同省は「定点当たり報告数が流行開始の目安である1.00を上回り、流行入りしました」としています。
夏のあいだ、数字はほぼ一本調子で増えてきました。昨年の同じ週と並べると、増え方の違いがはっきりします。
| 週(2026年) | 期間 | 全国の定点当たり報告数 | 昨年同期 |
|---|---|---|---|
| 第30週 | 7/20〜26 | 0.24 | 0.32 |
| 第31週 | 7/27〜8/2 | 0.37 | 0.30 |
| 第32週 | 8/3〜9 | 0.52 | 0.30 |
| 第33週 | 8/10〜16 | 0.69 | 0.28 |
| 第34週 | 8/17〜23 | 1.11 | 0.31 |
※厚生労働省「インフルエンザの発生状況について」(2026年8月28日報道発表)より作成(参照 2026.8.28)。
昨年は同じ時期に0.3前後で横ばいだったのに対し、今年は約3.6倍の水準です。都道府県別では沖縄県4.43、岩手県2.10、青森県2.08、東京都1.49と差が大きく、東京都も8月27日に都独自に流行開始を発表しています。
ただし冬の流行期とは桁が違い、2025年第47週(11月下旬)は51.12でした。いまは流行の入り口に立った段階と考えるのが実際に近いところです。国立健康危機管理研究機構(JIHS)は「夏季に患者が発生し、インフルエンザウイルスが分離されることもある」としており、夏の発生自体は珍しくありませんが、流行の始まる時期は年によって動きます。厚生労働省も、令和6年は例年より早く本格的な流行が生じ12月にピークを迎えたと説明しています。
ふつうのかぜとどう違う?受診の目安は?
厚生労働省は、インフルエンザの特徴を「38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感等の症状が比較的急速に現れるのが特徴です」と説明しています。一方で「併せて普通の風邪と同じように、のどの痛み、鼻水、咳等の症状も見られます」ともしており、かぜと共通する症状も少なくありません。全身のつらさが強く、症状の出方が急な点が違いとして挙げられますが、家庭で見分けるのは簡単ではありません。JIHSの解説では、感染から1〜3日の潜伏期間ののちに症状が現れ、約1週間で軽快するのが典型的とされています。
厚生労働省は「お子様ではまれに急性脳症を、高齢者や免疫力の低下している方では肺炎を伴う等、重症になることがあります」としています。次のようなときは様子見をせず受診してください。
- 高熱が続く
- 呼吸が苦しそう
- 意識の状態がおかしい(反応が鈍い、けいれんなど)
- 水分がとれず、おしっこが出ていない
夜間や休日で迷うときは、小児救急電話相談(#8000)に電話する方法もあります。
インフルエンザの治療薬にはどんな種類がある?
厚生労働省のQ&Aでは、治療薬としてオセルタミビルリン酸塩、ザナミビル水和物、ペラミビル水和物、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物、バロキサビル マルボキシル、アマンタジン塩酸塩(A型にのみ有効)が挙げられています。飲み薬・吸入薬・点滴と剤形はさまざまで、年齢や体重、症状、持病によって使えるものが変わります。どれを使うかは医師が判断しますので、これまで薬で困ったことがあるかを伝えるほうが役に立ちます。
「発症から48時間以内」の意味
厚生労働省は「抗インフルエンザウイルス薬の服用を適切な時期(発症から48時間以内)に開始すると、発熱期間は通常1〜2日間短縮され、のどからのウイルス排出量も減少します」とし、48時間以降に開始した場合は十分な効果は期待できないとしています。薬は病気をすぐ治すものではなく、発熱の期間を1〜2日ほど縮めることが期待されるもので、効果には個人差があります。
全員に必要とは限りません
厚生労働省は「インフルエンザは多くの場合、自然経過の中で4〜5日間の発熱等の症状が出現した後自然軽快します」としたうえで、抗インフルエンザ薬は重症化リスクが高い方に重症化予防効果があるとされる一方、そのほかの方では効果は限定的とし、「全ての患者に対しては必須ではないため、医師の慎重な判断に基づき使用してください」と説明しています。
抗菌薬(抗生物質)は効きません
厚生労働省は「ウイルスを病原体とする感染症に抗菌薬は効きません」と明記しています。以前もらって残っている抗菌薬を自己判断で飲ませるのは避けてください。
熱が高いとき、市販の解熱剤を使ってもいい?
家庭に市販薬がある方ほど注意していただきたいところです。成分によって、避けたほうがよいものがあります。
- 子どもにアスピリン(アセチルサリチル酸)などのサリチル酸系は使わない
- ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸も使わない
- 解熱剤が必要なときは、アセトアミノフェンが選択肢になる
根拠は公的な指針にあります。インフルエンザ脳症の診療戦略(2018年)はアスピリン・ジクロフェナク・メフェナム酸を禁忌とし、アセトアミノフェンが使用できるとしています。厚生労働省も2001年に、小児のインフルエンザにともなう発熱へのメフェナム酸製剤の投与は基本的に行わないことが適当としました。
大人向けの市販のかぜ薬・解熱鎮痛薬には、これらの成分が入っていることがあります。大人用を自己判断で減量して子どもに飲ませるのは避けてください。 外箱の「成分・分量」欄に加えて「効能・効果」「用法・用量」「使用上の注意」も確認し、迷ったら薬局にご相談ください。市販薬選びの基本は市販のかぜ薬の選び方でも解説しています。
薬を飲んだあとの「異常行動」は、何に気をつければいい?
インフルエンザにかかった子どもが、急に走り出す・部屋から飛び出そうとするなどの異常な行動をとることがあります。厚生労働省は、抗インフルエンザウイルス薬との因果関係は不明としたうえで、薬を服用していない場合でも、薬の種類に関係なく現れることを挙げ、対策をこう示しています。
「インフルエンザにかかり、自宅で療養する場合は、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無や種類によらず、少なくとも発熱から2日間は、保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講じて下さい」
つまり、薬を飲んでいるかどうかに関係なく、発熱から2日間は見守りが必要ということです。厚生労働省が挙げる防止対策の例は次のとおりです。
- 玄関やすべての部屋の窓の施錠を確実に行う(内鍵・補助錠がある場合はその活用を含む)
- ベランダに面していない部屋で寝かせる
- 窓に格子のある部屋で寝かせる
- できる限り1階で寝かせる(一戸建ての場合)
重度の異常行動は、就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多く、発熱から2日間以内に発現することが多いと知られています。小学生・中学生でも油断は禁物です。
保育園や学校は、いつから行けるの?
学校保健安全法施行規則では、インフルエンザの出席停止期間を「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで」と定めています(病状により医師が感染のおそれがないと認めたときを除く)。
読み間違えやすいのは、「発症後5日」と「解熱後2日(幼児は3日)」の両方を満たす必要があるという点です。熱が早く下がっても、発症から5日たっていなければ登園・登校はできません。保育園は登園届や意見書の書式が園ごとに異なる場合がありますので、復帰日は必ず園や学校に確認してください。
家庭でできる予防は?
厚生労働省が挙げる予防のポイントは、特別なことではありません。
- 手洗い:流水・石けんが基本。アルコール製剤(エタノール濃度80%前後)も効果があるとされています
- 適度な湿度:加湿器などで湿度50〜60%を保つ
- 十分な休養とバランスのとれた栄養摂取、こまめな換気
- 人混みを控える:やむを得ないときは不織布製マスクの着用も一つの防御策
なお2歳未満の乳幼児のマスク着用は、窒息や熱中症のリスクが高まるため奨められていません。
ワクチン接種については、インフルエンザの予防接種はいつ受ける?で詳しく解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 8月にインフルエンザが流行し始めるのは異常なことですか?
A. JIHSは夏季にも患者が発生することがあるとしており、夏の発生自体は珍しくありません。ただし今年の第34週は1.11で、昨年同期の0.31の約3.6倍です。冬の流行期(2025年第47週は51.12)と比べればまだ低い段階ですが、始まりが早いシーズンといえます。
Q. 抗インフルエンザ薬は必ず処方してもらったほうがいいですか?
A. 厚生労働省は、抗インフルエンザ薬の投与は全ての患者に必須ではなく、医師の慎重な判断に基づき使用してくださいとしています。重症化リスクの高い方には重症化予防効果があるとされる一方、そのほかの方では効果は限定的とされています。
Q. 家にある大人用の解熱剤を、量を減らして子どもに使ってもいいですか?
A. 避けてください。大人用の解熱鎮痛薬には、子どもへの使用が推奨されない成分が含まれることがあります。インフルエンザ脳症の診療戦略」(2018年)では、アスピリン・ジクロフェナク・メフェナム酸は禁忌とされ、アセトアミノフェンが使用できるとされています。迷ったら薬剤師にご相談ください。
Q. 薬を飲まなければ異常行動は起きませんか?
A. そうとは限りません。厚生労働省は、薬を服用していない場合でも、薬の種類に関係なく異常行動が現れることを挙げ、服用の有無や種類にかかわらず注意が必要としています。少なくとも発熱から2日間は、窓や玄関の施錠などの対策をとってください。
Q. 熱が下がったら、次の日から保育園に行けますか?
A. 行けません。「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで」が出席停止期間で、両方を満たす必要があります。園によって書式が異なるので、復帰日は必ず園に確認してください。
Q. 流行が早いと、ワクチンの接種も早めたほうがいいですか?
A. 接種時期の考え方は変わっていません。厚生労働省は「12月中旬までにワクチン接種を終えることが望ましい」としています。13歳未満のお子さんは2回接種が必要なので、秋のうちに1回目を済ませられるよう、かかりつけの医療機関の予約開始時期を確認しておくと安心です。
まとめ
- 厚生労働省は2026年8月28日、全国で流行入りしたと発表。第34週(8月17日〜23日)の定点当たり報告数は1.11で、目安の1.00を上回りました
- 昨年同期は0.31で、今年は約3.6倍の水準。ただし冬の流行期(2025年第47週は51.12)と比べればまだ入り口の段階です
- 子どもの解熱にアスピリンなどのサリチル酸系、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸は使いません(「インフルエンザ脳症の診療戦略」で禁忌)。大人用を自己判断で減量して飲ませるのも避けてください
- 薬の服用の有無や種類にかかわらず、発熱から少なくとも2日間は異常行動への見守りと窓・玄関の施錠を
- 出席停止は「発症後5日」かつ「解熱後2日(幼児は3日)」の両方を満たすまで。復帰日は園や学校に確認を
流行のニュースを見ると身構えてしまいますが、いまできる準備は「家にある解熱剤の成分を見直す」「かかりつけの小児科の予防接種の予約時期を確認する」の2つで十分です。気になることがあれば、薬局で薬剤師にご相談ください。
今シーズンは流行入りが早いぶん、備えを見直す時間も限られます。家にある解熱剤の成分の確認とあわせて、体温計や水分補給の準備も点検しておくと慌てずに済みます。何をそろえておけばよいかは家庭の感染症そなえリストにまとめました。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療の代替となるものではありません。気になる症状がある場合や判断に迷う場合は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。
参考文献・出典
- 厚生労働省「インフルエンザによる発熱に対して使用する解熱剤について(医薬品等安全対策部会における合意事項)」(平成13年5月30日) https://www.mhlw.go.jp/houdou/0105/h0530-4.html(参照 2026.9.9)
- 厚生労働省「インフルエンザの発生状況について」(2026年8月28日報道発表) https://www.mhlw.go.jp/content/001742996.pdf(参照 2026.8.28)
- 東京都「東京都内でインフルエンザが流行開始」(2026年8月27日報道発表) https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2026/08/2026082720(参照 2026.8.27)
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS)「IDWR速報データ 2026年第33週」 https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/provisional/2026/33/index.html(参照 2026.8.27)
- 日本医療研究開発機構研究費「新型インフルエンザ等への対応に関する研究」班「インフルエンザ脳症の診療戦略」(平成30年2月/2009年9月「インフルエンザ脳症ガイドライン 改訂版」の再改訂版) https://www.childneuro.jp/uploads/files/about/influenzaencephalopathy2018.pdf(参照 2026.9.9)
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS)「インフルエンザ(詳細版)」 https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/influenza/detail/(参照 2026.8.27)
- 厚生労働省「令和7年度 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2025.html(参照 2026.8.27)
執筆・監修
くすりやきゅー(薬剤師/病院・保険薬局で10年以上勤務)
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