家庭の感染症そなえリスト|体温計・経口補水液・市販薬の備え方

コラム

家庭の感染症そなえとは、体温計・水分補給の備え・解熱鎮痛薬・嘔吐物の処理セット・マスクや手指衛生用品を、流行が始まる前にそろえておくことです。

金曜の夜に子どもが40度の熱を出した。翌朝には下の子も熱っぽい。薬局は閉まっていて、家にあるのは去年の残りの解熱剤だけ——感染症の流行期には、こういう「間に合わなかった」が起こります。

備えといっても、特別なものは必要ありません。多くはドラッグストアなどでそろえられます。ただし食品や医薬品には期限があるので、表示された期限と保管方法を確認し、使った分や期限が近づいたものを補充・交換するのが前提です。この記事では、何をどんな考え方でそろえておけばよいかを、厚生労働省・消費者庁・国立健康危機管理研究機構(JIHS)などの情報をもとに整理しました。

なぜ「流行してから買う」では間に合わないの?

理由は3つあります。

1. 夜間・休日にも急な発熱や嘔吐は起こる

体調の変化は時間を選びません。夜間や休日は、薬局も店舗も開いていないことがあります。

2. 家族が時間差で発症することがある

感染症は家庭内で順番に広がることがあります。たとえばマイコプラズマ肺炎は潜伏期間が通常2〜3週間と長く(JIHS)、上の子が治りかけた頃に下の子が発熱する、という経過をたどることがあります(マイコプラズマ肺炎の記事)。家族が続けて発症すると、看病が長引くことがあります。

3. 看病する側も倒れることがある

保護者が同じ感染症にかかると、買い出しに行くこと自体が難しくなります。元気なうちに必要なものを確認しておくと、買い出しの負担を減らせます。

何をそろえればいい?(そなえリスト早見表)

カテゴリ中身の例優先度
体温を測る体温計、電池の予備★★★
水分を取る経口補水液、常温保存できる飲料★★★
熱・痛みに備える解熱鎮痛薬(家族の年齢に合うもの)、お薬手帳★★★
嘔吐・下痢に備える使い捨て手袋、マスク、ペーパータオル、ビニール袋、塩素系の消毒剤★★☆
感染を広げないマスク(サイズ違い)、石けん、手指消毒剤、ペーパータオル★★☆
環境を整える室温計・湿度計、替えのシーツやタオル★☆☆
相談・受診に備えるかかりつけ医、休日夜間診療、小児救急電話相談(#8000)の連絡先★★★

※ 冷却シートについて、厚生労働省の資料は窒息・誤飲の危険があるため要注意としています。冷やす場合は、首の横・わきの下・足の付け根に濡れたタオルを当てる方法が案内されています。

まずは体温計と水分補給の備え、そして相談先の確認から始めてください。解熱鎮痛薬は、家族の年齢・持病・使用中の薬を薬剤師に伝えたうえで、必要に応じて用意します。

備えがあることと、受診が要らないことは別です。後半の「備えていても受診したほうがよいのはどんなとき?」の内容を、そろえるものと同じくらい大事なものとして必ず確認しておいてください。

体温計はどう選ぶ?

体温計は、測る部位で使い分けが変わります。

  • わきで測るタイプ:もっとも一般的。測定に時間がかかる実測式と、短時間で結果が出る予測式があります
  • 耳で測るタイプ:短時間で測れるので、じっとしていられない小さなお子さんに使われることがあります
  • 額などにかざす非接触タイプ:触れずに測れます

家庭で選ぶときのポイントは3つです。

  1. 家族の年齢に合っているか(対象年齢は製品ごとに異なります)
  2. 電池の種類と予備があるか(いざというときに電池切れ、が一番困ります)
  3. 台数は家族構成に応じて検討する(きょうだいがいる家庭では、1本を回して使うと共用のたびにお手入れが必要になります。お手入れの方法は製品の説明書に従ってください)

なお、測り方や測る部位が違うと数値も変わります。同じ体温計で、同じ部位を、同じ時間帯に測って比べると、熱の経過が分かりやすくなります。

水分補給の備えはどうする?

発熱・嘔吐・下痢があるときは、水分が失われやすくなります。ここで大事なのは、普段の水分補給用と、体調不良時のものを分けて考えることです。

普段の水分補給用には、家族が飲み慣れた飲料を常温保存できる形で備えておきます。

経口補水液は、日常的な水分補給用のものではありません。 消費者庁は2025年6月、経口補水液について「脱水状態等でない場合又は脱水の原因となる疾病等に罹患していない場合に漫然と使用することにより、短期的に健康上の問題を引き起こす可能性があります」と注意を呼びかけています。

厚生労働省の資料でも、経口補水液は「軽症から中等症の脱水の時」に使うものとして案内されています。備える場合は、製品に表示された対象となる状態や使用上の注意を確認してください。塩分やカリウムの摂取について医師から指示を受けている方は、使う前に医師にご相談ください。スポーツドリンクとの違いは経口補水液とスポーツドリンクの違いの記事で解説しています。

備え方のコツは次のとおりです。

  • 家族の人数と、期限内に使い切れる量を考えて備える
  • 使った分を補充する(ローリングストック)
  • 開封後の保存方法は製品ごとに違うので、パッケージの表示を確認する

なお、水分がまったく取れない、ぐったりしている、おしっこが出ないといったときは、飲みもので粘らずに医療機関へご相談ください。

解熱鎮痛薬は家に置いておいていい?

置いておくこと自体は問題ありませんが、成分だけでなく、製品ごとの対象年齢・用法用量・使用上の注意まで確認することが欠かせません。同じ成分でも、製品によって使える年齢や1回量が違います。

インフルエンザのときは、特に成分に注意が必要です。

  • アスピリン(アセチルサリチル酸)などのサリチル酸系は使わない
  • ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸も使わない
  • 必要なときはアセトアミノフェンが選択肢になる

インフルエンザ脳症の診療戦略(2018年)がアスピリン・ジクロフェナク・メフェナム酸を禁忌としており、厚生労働省も2001年に、小児のインフルエンザにともなう発熱へのメフェナム酸製剤の投与は基本的に行わないことが適当としています。

つまり、大人用の解熱鎮痛薬を自己判断で減量してお子さんに飲ませるのは避けてください。持病やアレルギー、使用中の薬がある場合は、医師・薬剤師にお伝えください。

もう1点、同じ成分が複数の薬に入っていることがあります。アセトアミノフェンは総合かぜ薬などにも配合されていることがあるため、解熱鎮痛薬とかぜ薬を一緒に飲むと、知らないうちに同じ成分を重ねてしまうことがあります。併用してよいかは、外箱の成分表示を見比べるか、薬剤師にご確認ください。

また、家に置いてある薬は年に一度見直しをおすすめします。

  • 使用期限が切れていないか
  • 開封済みのものが湿気ていないか
  • 保管場所が高温・多湿になっていないか(薬の正しい保管方法
  • お子さんの手が届く場所に置いていないか

なお、この記事では常備する市販薬の具体的な商品はご案内していません。適した成分は年齢・持病・飲み合わせによって変わるためです。お薬手帳を持って薬局で相談するのがおすすめです(お薬手帳のメリット)。

嘔吐物の処理セットには何が要る?

冬に流行する感染性胃腸炎では、嘔吐物の処理が家庭内感染を防ぐ分かれ目になります。慌てて素手で拭いてしまわないよう、あらかじめ1か所にまとめておくのがおすすめです。

そろえておきたいもの

  • 使い捨て手袋
  • マスク
  • ペーパータオル(大量に使います)
  • ビニール袋(処理後にまとめて口を縛る用)
  • 次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系の消毒剤
  • 使い捨てエプロン

厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」は、処理の手順を次のように説明しています。

ペーパータオル等で静かに拭き取ります。拭き取った後は、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200 ppm)や亜塩素酸水で浸すように床を拭き取り、その後水拭きをします

また、嘔吐物や便で汚れた廃棄物は、ビニール袋に入れ、塩素濃度約1,000 ppmの次亜塩素酸ナトリウムに十分浸す方法が示されています。

濃度の調整方法や使える素材は製品によって異なりますので、購入した製品の使用方法を必ず確認してください

次亜塩素酸ナトリウムを使うときの注意も、あらかじめ知っておいてください。厚生労働省は「酸性のものと混ぜると塩素ガスが発生して危険です」「金属製のものに次亜塩素酸ナトリウムを使用すると、腐食する可能性がある」と説明しており、手指の消毒には使えないものとしています。換気をしながら、製品の表示に従って使ってください。

そしてもう1点、見落とされやすい注意があります。同Q&Aはノロウイルスについて、消毒用エタノールによる手指消毒について「石けんと流水を用いた手洗いの代用にはなりません」としています。アルコールがあるから大丈夫、とはならないということです。そのため、嘔吐物の処理は次亜塩素酸ナトリウムを使う前提でそろえておくと、原因が分からない場面でも対応しやすくなります。

マスク・手指衛生はどのくらい備える?

JIHSはマイコプラズマ肺炎の予防について、「流行期には手洗い、うがいなどの一般的な予防方法の励行と、患者との濃厚な接触を避けること」を挙げています。特別なことではなく、基本の徹底が中心になります。

備え方のポイント

  • マスクは着用する家族に合うサイズを用意する(子ども用が家にない、というのはよくあります)。ただし厚生労働省は、2歳未満についてはマスクの着用を推奨していません。年齢が上のお子さんでも無理に着用させず、体調に注意してください
  • 石けんは詰め替えを1つ余分に
  • 手指消毒剤は玄関とリビングなど、使う場所に置く
  • 家族に症状が出たときのために、ペーパータオルを用意しておく(タオルの共用を避けるため)

家族に症状が出ている間は、家庭内でもタオルの共用は避けたいところです。看病が始まってから買いに行くのは大変なので、ペーパータオルは1袋ストックしておくと役に立ちます。

備えていても受診したほうがよいのはどんなとき?

家庭での備えは、あくまで「受診までのつなぎ」と「軽い症状のケア」のためのものです。緊急度によって行動が変わります。

すぐに救急車(119番)を呼ぶ

厚生労働省「上手な医療のかかり方」は、子どもで救急車が必要なときとして次を挙げています。

  • 意識がおかしい
  • けいれん
  • 呼吸がおかしい(声が出せない、口唇が紫色のチアノーゼ)
  • 出血が止まらない
  • やけど(背中・胸・両足・顔全体など広い範囲、煙を吸った)
  • 誤飲(タバコが溶け出した水、除草剤・殺虫剤・トイレ用洗剤、酸・アルカリ・灯油など)

同資料は「迷っても、119番しましょう」「自分で連れて行くのが不安な時も119番しましょう」としたうえで、保険証・母子手帳・お薬手帳を用意するよう案内しています。備えの一つとして、置き場所を決めておいてください。

発熱で、時間外でも早めに受診したいとき

同じ資料は、発熱について次のような場合を挙げています。

  • 生後3か月未満(予防接種後の発熱を除く)
  • 脱水かな?と思うとき
  • ぐったりしているとき
  • 初めてひきつけたとき
  • 体温41℃以上

あわせて「熱が高いほど病気が重いわけではない」とも説明されています。子どもの全身状態を「『食う』『寝る』『遊ぶ』『出す』ができているか」と表現しており、熱の数字だけでなく全身の様子で判断するのが基本です。

判断に迷うとき

  • #8000(子ども医療電話相談)
  • #7119(救急安心センター事業。実施していない地域もあります)

どちらも実施時間や対応地域が異なるので、お住まいの地域の番号と時間帯を、元気なうちに確認しておくと安心です。

症状ごとの詳しい目安は、次の記事にまとめています。

よくある質問(FAQ)

Q. まず何から買えばいいですか?

A. 体温計と、普段の水分補給用の飲料からで大丈夫です。あわせて、かかりつけ医・休日夜間診療・#8000の連絡先を控えておいてください。解熱鎮痛薬は、家族の年齢や持病、使用中の薬を薬剤師に伝えたうえで、必要に応じて用意します。備えがあっても受診が必要な症状はありますので、「備えていても受診したほうがよいのはどんなとき?」もあわせてご確認ください。

Q. 市販薬は何を常備しておけばよいですか?

A. 一律の正解はありません。適した成分は年齢・持病・飲んでいる薬との組み合わせによって変わります。お薬手帳を持って薬局で相談し、ご家族に合うものを選んでいただくのがおすすめです。

Q. 消毒用アルコールがあれば、嘔吐物の処理も大丈夫ですか?

A. 厚生労働省のQ&Aはノロウイルスについて、消毒用エタノールによる手指消毒について「石けんと流水を用いた手洗いの代用にはなりません」としています。嘔吐物は、まずペーパータオル等で静かに拭き取ったうえで、その箇所を塩素濃度約200 ppmの次亜塩素酸ナトリウムなどで拭き取り、その後に水拭きをする方法が示されています。家庭では原因がすぐに分からないことが多いので、アルコールだけで済ませない備え方をしておくと安心です。

Q. 次亜塩素酸ナトリウムはどれくらいの濃度で使うのですか?

A. 厚生労働省のQ&Aでは、嘔吐物を静かに拭き取ったあとの床に塩素濃度約200 ppm、嘔吐物や便で汚れた廃棄物については袋の中で約1,000 ppmの液に十分浸す方法が示されています。ただし、濃度の調整方法や使用できる素材は製品ごとに異なりますので、必ず製品の使用方法をご確認ください。酸性のものと混ぜると塩素ガスが発生して危険です。手指の消毒には使えません。

Q. 去年の解熱剤が残っています。使えますか?

A. 市販薬か処方薬かで考え方が違います。市販薬は、使用期限に加えて、開封後の使用期限・保管方法・いま使う人に適した製品かどうかを確認してください。以前処方された薬は、今回も使えるとは限りません。PMDAは「病状が同じだからといって、以前に使用して残ったくすりを自己判断で使用してはいけません」「残ったくすりを絶対に他の人に渡したり、他の人からもらったりしてはいけません」としています。自己判断で再使用せず、処方元や調剤した薬局にご相談ください。薬の実物や包装、お薬手帳があると相談がスムーズです。

Q. 備えはどこに置いておくのがよいですか?

A. 高温・多湿を避けた場所で、かつお子さんの手が届かない場所が基本です。嘔吐物の処理セットは、いざというときすぐ取り出せるよう1か所にまとめておくと慌てずに済みます。

Q. 家族の1人が発症しました。まず何をすればよいですか?

A. まず症状と緊急度を確認してください。呼吸が苦しそう、意識がはっきりしない、けいれんが止まらないといったときは119番です。緊急性がなければ、タオルの共用をやめ、看病する人はマスクを着けて手洗いを徹底します。潜伏期間の長い感染症では、あとから別の家族が発症することも見込んでおくと落ち着いて動けます。

まとめ

  • 備えは体温計と普段の水分補給用の飲料、そして相談先の確認から。解熱鎮痛薬は、家族の年齢・持病・使用中の薬を薬剤師に伝えたうえで必要に応じて用意します。
  • 解熱鎮痛薬は成分だけでなく、製品ごとの対象年齢・用法用量・使用上の注意まで確認します。大人用を自己判断で減量して子どもに使うのは避けてください。アセトアミノフェンはかぜ薬にも入っていることがあり、重複にも注意が必要です。
  • 経口補水液は日常的な水分補給用ではありません。消費者庁は、脱水状態等でない場合に漫然と使用すると健康上の問題を引き起こす可能性があるとしています。
  • 嘔吐物は静かに拭き取ってから、その箇所を塩素濃度約200 ppmの次亜塩素酸ナトリウム等で拭き、水拭きします。汚れた廃棄物は袋の中で約1,000 ppmの液に十分浸します(厚生労働省)。酸性のものと混ぜない、手指には使わない、換気する、が必須です。
  • ノロウイルスについて、厚生労働省は消毒用アルコールは、石けんと流水による手洗いの代用にはならないとしています。家庭では原因が分からないことが多いので、アルコールだけに頼らない備えを。
  • 備えがあることと、受診が要らないことは別です。 意識がおかしい、けいれん、呼吸がおかしい(声が出せない・口唇が紫色)のときは119番。生後3か月未満の発熱(予防接種後を除く)は、時間外でも早めに受診してください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療の代替となるものではありません。気になる症状がある場合や判断に迷う場合は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。

参考文献・出典

執筆・監修

くすりやきゅー(薬剤師/病院・保険薬局で10年以上勤務)
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